楽天福山博之投手(28)がオリックス16回戦(京セラドーム大阪)で今季3セーブ目を挙げた。楽天は9回表に聖沢の適時打で逆転に成功。その裏から登板した福山は、2死から二塁打を許したものの、1点リードを守った。リーグ2位の29セーブをマークしていた松井裕樹投手(21)が、左肩後部の痛みのため、27日に出場選手登録を抹消。代役に指名されたサブちゃんが、26日ソフトバンク戦に続き、守護神の役目を果たした。

 いつもはほとんど表情を変えない福山が、ほっとした顔をみせた。9回裏2死二塁、オリックス小谷野の打球がマウンド前で大きく弾む。必死にジャンプしてグラブに当て、後ろにこぼれた球を拾うと、落ち着いて一塁に送球。1点リードをきっちり守った。

 守護神の役目を託した梨田監督が言う。「あのジャンプ力がなかったら、センターに抜けていたかも。サブの反射神経はすごい」。右肘骨挫傷から戻ってきた茂木も絡んで、土壇場に逆転。もし、小谷野の打球が同点打になっていたら、せっかくのいいムードがしぼむところだった。

 試合後の福山はいつもの淡々としたサブちゃんに戻っていた。「今日は(先発の)釜田がよく投げていたし、中継ぎのみんなも頑張っていた。最後まで諦めてはいませんでした」。絶対的な存在の松井裕が長期離脱(復帰まで4週間の見込み)。代役に指名された重圧は容易に想像できるが、福山はマウンドでも取材でも、できるだけ平常の姿を貫いた。

 松井裕が異変を訴えた26日に続くセーブ。前回は3点差で今回は1点差と、より過酷な状況だった。「調整ですか? (中継ぎだった)これまでと変わりありません」。離脱した松井裕から言葉があったか、という問いにも「特にありません」。これが福山が福山たるゆえん。何も特別なことはない、自分の仕事は任されたイニングをゼロに抑えることだけ。姿勢は一貫している。

 今季初の4連敗をすんでで回避し、梨田監督は「楽に勝てればいいけど、こういう勝ち方も印象に残るね」と振り返った。福山が9回をきっちり抑えたからこそ、この日の1勝が今後につながる。今季41試合に登板し、防御率は0・74。「代役」という言葉がふさわしくないほど、今の福山には存在感がある。【沢田啓太郎】