中日ナインが森繁和監督(62)に白星を贈った。7日に監督の長女、麗華さん(享年35)が乳がんのため他界。前日は延長12回ドローでわずかに届かなかった勝利を、文句なしにつかみ取った。大島からウイニングボールを受け取った森監督は「娘のところに持っていけということだろう。みんなが勝たせてくれた。ユニホーム着て、みんなと一緒にできたことに感謝したい」と頭を下げた。

 快勝劇の中心にいたのはルーキー京田陽太内野手(23)だった。初の5安打で打線をけん引した。初回先頭で左中間二塁打。初の三盗も決め、ビシエドの遊ゴロで先制のホームを踏んだ。監督は就任1年目の今季、足を使い、少ない安打数でも1点を奪う野球を掲げた。ドラフト2位ルーキーが完璧に実行した。

 3回は左越えに二塁打。5回には1死三塁から右前にはじき返す適時打を放った。「しっかり投手に向かっていけたのがいい結果につながったと思う」。

 6回の2点内野安打というめずらしい記録も、快足があってこそ。1試合3打点も初だ。8回も俊足を飛ばして投ゴロ内野安打をもぎ取った。2盗塁を決めて19盗塁とし、大島を抜いてリーグ2位に立った。

 中日が目指す野球の象徴にもなっている新人王候補は「たまたまです。1年の中の1日。また明日からチームに貢献できるようにしたい」と語った。守っても強力打線を相手に2試合で2失点。森監督は「ここ(ナゴヤドーム)じゃないとできないと思われるのはシャクだけど。2試合続けてできて、勝ってよかった」。穏やかに笑った。【柏原誠】

 ▼ルーキー京田がプロ初の5安打。新人の1試合5安打は67年8月30日南海戦の大下(東映)に次ぎ、ドラフト制後2人目。セ・リーグでは58年7月5日国鉄戦の小坂(広島)以来59年ぶりとなった。また猛打賞はこれで10回目。猛打賞回数の新人記録は58年長嶋(巨人)の14回があるが、10回以上記録したのは昨年の高山(阪神)以来25人目(セ=11人目、パ=10人、1リーグ=4人)。中日では99年福留以来となった。