広島今村猛投手(26)が、大ピンチを断ち切って勝利をたぐり寄せた。8回、ジャクソンの連続押し出しで1点差に迫られ、なお2死満塁でヤクルト中村を凡打に退けた。9回は中崎翔太投手(25)が3人切り。2位阪神が追い上げる中、連敗を2で止める大きな勝利だった。開幕から抑えの役割を交互に担う両右腕が、正念場の投手陣をけん引する。

 逆転を信じて声を上げるヤクルトファンの期待をわずか4球でかき消した。広島のリードが3点から1点となった8回。今村がなおも2死満塁のピンチでマウンドに上がった。中村から初球136キロでファウルを奪うと、2球で追い込んだ。外角へのボール球を1球挟み、最後は144キロ真っすぐで遊ゴロに打ち取った。フォークを封印し、全球真っすぐ勝負で反撃ムードを遮断した。

 「開き直って行きました。四球もダメ、パスボールでも1点入る。びびらずに捕手の構えているところに投げました」

 先発ジョンソンの好投で8回まで試合が進み、この日は出番はないと思われた。だが、8回2死二、三塁から登板した2番手ジャクソンが3者連続四球で2失点。制球が荒れる投球内容に、首脳陣はたまらず、8月22日まで抑えを任せていた今村にスイッチ。「いつでも行ける準備はできていました」。ピンチにも動じなかった。満塁で14打数6安打11打点だった勝負強い中村を封じた。降板後はベンチでジャクソンに声をかけながら励ますなど、マウンドだけでなく、ベンチでも頼もしい存在だった。

 9回は、中崎が3者凡退で締めた。「1点差をものに出来たのは良かった。僕は任されたところで投げるだけ」。投手陣が安定感を欠く今季、代わる代わる抑えを務めてきた両右腕が、悪い流れを断ち切り勝利を呼び込んだ。

 2投手の踏ん張りで逃げ切り、連敗を2で止めた。緒方監督は「猛(今村)は連投になったけど、1回(抑えから)外して間を置いて、しっかり調整して戻ってきてくれた。後ろのポジションは、ダブルストッパーでいけるのが理想だから」とうなずく。残り20試合は最後の踏ん張りどころ。頼れる両輪の存在が、ラストスパートの原動力となる。【前原淳】