8回、ソフトバンク中村晃が右翼スタンドに勝ち越し2ランを突き刺すと、ベンチで工藤監督は両手を突き上げた。「行った~! と思いました。今日はみんなの前で『バカになって野球をやろう』と言っていたので、僕自身がそれをやらないと」。試合前の円陣でナインにハッパをかけたが、指揮官自身が開き直って迎えた一戦。大胆な打線組み替えが功を奏した。

 負ければ王手をかけられる瀬戸際で、第2戦まで3番で8打数2安打だった中村晃を7番に下げた。決勝2ランの中村晃は「ホッとしました。無心でいきました。僕のせいで負けていたので何とかしたかった」。前日の第2戦でのバント失敗の責任を感じていた。スタンドからの大声援に「仲間がたくさんいるんだと実感した」と、目に光るものがあった。

 工藤監督は明石、上林らを先発メンバーから外し、今季2試合で無安打だった城所を2番中堅で抜てき。3回には今季初安打となる右翼線二塁打から内川の3ランを呼び込んだ。守っても城所はウィーラーの左中間への当たりにスライディングキャッチ。今季2軍で待機中が長かった男が、水を得た魚のように大暴れした。起用した工藤監督も「打撃の調子がいいと聞いていた。守っても打ってもすごい。久しぶりでもあれだけのプレーができる」と驚くばかりだった。ギャンブルだった打線改造にナインは応えた。94勝の巨大戦力で一気にCS突破へ突き進む。【石橋隆雄】