楽天の新人全10選手が15日、11年3月11日に発生した東日本大震災で被害を受けた宮城・名取市閖上地区を訪問した。ドラフト6位西巻賢二内野手(18=仙台育英)、育成2位の松本京志郎内野手(18=光南)の2人は東北・福島出身で同じく地震の被害を受けた。被災した宮城に本拠を置く球団でプレーする意味を再認識し、プロ1年目のスタートを切る。

 目前に広がる光景が、信じられなかった。福島出身の西巻と松本は閖上地区の現状を目の当たりにし、言葉を失った。震災から7年を迎えるが建物は少なく、かさ上げの盛り土が目立った。閖上中の慰霊碑に手を合わせ、西巻は神妙な顔つきで語った。「(秀光中から)宮城にいたけど、じっくり被災地を訪れたのは初めて。被害の大きさをあらためて感じた」。松本も「当時の地震は異常に長かった。閖上はまだ復興途中だと感じた」と、続けた。

 東北出身者が、被災した宮城に本拠を構える意味を再確認した。ともに小5の3月に震災を経験。それでも順調に歩みを進められたのは、野球があったから。内陸にある会津若松市出身の西巻は、楽天の存在を強調した。

 西巻 今までは楽天の選手に勇気づけられてきた。今度は逆に元気や勇気を与えたい。野球を通して、皆さんに笑顔を届けたい。

 松本の実家も西巻と同じく内陸の西郷村にあり、家の中はぐちゃぐちゃになった。小6夏まで原発の放射線の影響で、屋外では2時間ほどしか満足にプレーできなかった。

 松本 あの地震を体験しているからこそ、自分にできることがある。いち早く支配下登録されて1軍でプレーできるようになれば、勇気をもらってくれる人がいると思う。

 13年の球団初の日本一で、東北一帯が歓喜に沸いた。今度は自分たちが返す番だ。西巻は「見ていて必死にガッツあふれるプレーで、勇気づけたい」と自信を見せる。チームの勝利に貢献し、再び東北に力を与えてみせる。【高橋洋平】