武士の勲章だ。楽天則本昂大投手(27)が、史上5位の早さで通算1000奪三振をクリアした。気温7・7度の悪条件で強打のソフトバンクを封じ、チームの連敗を5で止めた。

 そぼ降る春雨を裂いた。3回2死一、二塁。打者は内川。3球目、ど真ん中からフォークを落として振らせた。「今日のフォークはいい」。白い息を吐き、両手で帽子を目深にかぶり直して表情を消した。眼光だけ光らせ同じ要求を待ち、より確実に、直前よりボール1個分、内側へ落とした。現役最高の好打者をばっさと斬り捨てても「いつか取れる。それが今日だった」と記念ボードに興味なし。ベンチでシャドーを反復し、次の獲物へ備えた。

 堂々たるワインドアップから肘をクルリと回して素早くトップを決め、右斜め上から一気に斬りさばく。その恐怖を肌で知る男がいる。去年まで西武、古巣へ戻り仲間となった渡辺直だ。通算33打数12安打、打率3割6分4厘は歴代1位。「得意だからではない。則本だから出た数字」と言う。

 渡辺直 打席から見ると、則本は実際よりずっと大きく見える。1球1球、体ごと向かってくる殺気を感じる。速い腕の振りに負けないよう集中して、死にもの狂いで立ち向かわないと、本当にやられる気がした。

 プレート板から打席、18・44メートルを支配する。「不思議だけど、則本の場合は本当にある感覚」と言う。「三振1000個、2000個で100勝、200勝できない。ただ、積み重ねという意味で自分を褒めてもいいかな」と則本。今季1勝。今年も杜(もり)の都に君臨する。【宮下敬至】

 ▼通算1000奪三振=則本(楽天) 6日のソフトバンク1回戦(楽天生命)の3回、内川を空振り三振に仕留めて達成。プロ野球147人目。初奪三振は13年3月29日のソフトバンク1回戦(ヤフオクドーム)でラヘアから。通算958回で達成はスピード5位となり、1042回の12年田中(楽天)より早く到達した。