ミスを帳消しにする殊勲打だった。同点の延長11回。清田が敬遠されて迎えた2死満塁の好機で、ロッテ田村龍弘捕手(23)は勝負の打席に立った。「ここで打てなかったら一生恨まれると思って打席に入りました」。カウント1-1から日本ハム井口の低めスライダーを捉えた。執念の中前打で走者を一掃した(1点は挟殺プレーの間)。

 「本人が一番ホッとしてるんじゃないですか」。井口監督は目を細める。田村は3回、延長10回と2度、送りバントを失敗。7回の守備は捕逸で振り逃げも献上した。「僕は3割、4割打てるわけじゃない。小技は決めないといけない」。反省と悔しさを一打に込めた。

 チームプレーの精神で同一カード3連敗を阻止した。決勝打の直前には、代走岡田が菅野と重盗に成功。快足を生かして二、三塁と得点機を演出した。翌8日は試合がないため、投手陣は7人をつぎ込んだ。「総動員で勝った試合ですね」と振り返った井口監督は、7回裏2死満塁のピンチで初めて自らマウンドへ。4番中田を迎えた松永に「翔をしっかり抑えてくれ」と伝え、集まった内野手からは笑みがこぼれた。

 正捕手として、扇の要からすべてを見ている田村にはチームの柱の自覚が芽生えている。試合後は居残り特打ならぬ志願の“特バン”で、約30分間のバント練習。春季キャンプでは寝坊で2軍降格になったこともあった。「僕は年齢的には若いですけど、引っ張っていかなきゃいけない立場」。目の色が変わった。

 日本ハムの連勝を止め、2位タイ浮上で次戦は全勝中の西武戦。「強いことは分かってる。1戦目が大事。勢いづけないように大胆に抑えたい」。今年の田村は頼もしい。【鎌田良美】