ソフトバンク柳田悠岐外野手(29)が史上65人目、70度目のサイクル安打を達成した。日本ハム5回戦(札幌ドーム)で本塁打、単打、二塁打、単打と4打数4安打で迎えた8回の第5打席、右中間への三塁打で決めた。球団ではダイエー時代の03年村松有人以来、15年ぶりの快挙。柳田がけん引しチームは、今季2度目の先発全員安打となる最多17安打で10得点。連敗を2で止めた。

 打球がワンバウンドで右中間を真っ二つに破った。3万4165人のざわめきの中、柳田は迷いなく二塁を蹴って三塁へ向かった。右足から滑り込む背中に返球が当たり、セーフ。ベース上で「サイクル! サイクル!」と喜んだ。

 打席に向かう時、ベンチでナインが「三塁打! 三塁打!」と騒いでいたが「自分のスイングをすることだけ」に集中。「マジで奇跡。怖いです。(打球が)抜けた時はオッと思って、一生懸命走った。運がよかった」と頬を緩めた。

 大好きな札幌ドームで大暴れした。昨季の打率は4割5分2厘。「なんか好きですね。気温ですかね」。プロ2度目の5安打。その中でも初回の先制4号ソロが効いた。今季の有原は左打者の内角へカットボールを投げるとミーティングでチェック。その内角低めへのカットボールを右中間スタンドへたたき込んだ。5回にも再び内角のカットボールを中堅フェンス直撃の適時二塁打。決め球を完全に攻略し、試合を決めた。

 サイクル安打の先輩でもある藤本打撃コーチは「ほかの打者は(有原のカットを)打てなかった。内角に来てもフルスイングするから打てる。厳しいところに投げても打たれるんじゃ、投げるところがない」と有原へ与えたダメージの大きさを口にした。

 札幌好きな理由の1つが、メジャー流の本塁打実況だ。日本ハムのCS放送の実況をする近藤祐司アナウンサー(44)に、ホームの日本ハム選手が打った時しか言わない「イッツ ゴーンッ(It's gone=入った)」というセリフをリクエストする。この日も練習中に「打ったら激しめでお願いします」とおねだり。昨年の7月8日に続き、実況が再現された。

 ここまで打率3割3分9厘、16打点、4本塁打に6盗塁とチーム4冠で打線を引っ張る。球団では15年ぶり4人目のサイクル安打にも「いい思い出ができた。また明日から元気よくやろうと思う」とすぐに気持ちを切り替えた。「昨日は昨日。今日は今日」。余韻に浸らないのがギータ流だ。【石橋隆雄】