プロを目指したあの頃と同じように、神奈川で大活躍した。巨人のルーキー大城卓三捕手(25)が4月8日以来の先発出場で4打数3安打2打点。先発田口も7回2失点と好リードし、連敗脱出に貢献した。

 執念がひと伸び分の力となった。2回無死一、三塁。DeNAウィーランドの初球、146キロ直球を強引に振り切った。詰まった打球は強風にあおられ、背走した二塁手の頭上を越す。「落ちろ落ちろと思いながら一塁を回りました」とポトリと中前に落ちる適時打が口火となった。第2打席は右翼手の頭上を越える適時二塁打、第3打席は一、二塁間を痛烈に破る右前打と3安打。勢いに乗って打ちまくった。

 想像以上の未来に立っている。小さい頃からプロを目指し、野球に没頭。沖縄から2つ上の兄の背中を追い、東海大相模に入学した。「全部がプロへの練習でした」と走る、振る、守ると徹底的に練習を積み重ねた。高校3年夏には神奈川大会を制して甲子園で準優勝。8年ぶりに戻った青春の地で「ハマスタで巨人のユニホームを着る想像はなかったです」と照れくさそうに笑った。

 憧れのユニホームだった。小学校の頃のヒーローは松井秀喜氏。同じ左打者のホームランバッターの大きな放物線は色あせずに心にある。特に2000年のミレニアム打線は強烈に焼き付く。高橋、松井、マルティネス、清原、江藤とずらり強打者が並ぶ姿に「超強力打線で、すごいと思っていた」と興奮。強く、格好いい、プロの姿が刻み込まれていた。

 自身初のお立ち台では子どもたちに向けて一言と問われ「自分も小さい頃からプロ野球選手を目指してやってきた」とかみしめた。汗と涙をこぼし、夢をつかむためにやってきた場所での3安打2打点。「高校から神奈川なんで、沖縄の思い出が少ない」と笑う男が、第2の故郷でプロとして大きな歓声を浴びた。【島根純】

 ▼ルーキー大城が3安打を放ち、プロ入り初の猛打賞。大城の先発は8番で今季4試合目だが、これで先発試合では12打数6安打、打率5割の大当たり。今季の巨人は8番に小林24試合、大城4試合、立岡1試合の3人を起用し、合計で88打数31安打、打率3割5分2厘。打順別の打率では1番の3割5分3厘に次いで高い「恐怖の8番打者」となっている。