今季の「日本生命セ・パ交流戦」も1試合を残すのみとなった。ヤクルトがセ・リーグの球団としては14年巨人以来の1位となったが、全体ではパ・リーグが9年連続の勝ち越しを決めた。日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏(47)がひと足早く交流戦の戦いを振り返るとともに、リーグ戦再開後の注目点や展望を語った。(記録は20日現在)

 ヤクルトがセ・リーグで独り勝ちした要因は、投打のバランスがよくなったことだろう。打ち勝ったケースもあったが、勝ちゲームのほとんどは、投手が粘りながら試合を進め、打者が得点機を逃さない展開だった。交流戦中のチームの防御率(3・38)と打率(2割5分1厘)は、ともに抜きんでた数字ではなかった点に、逆に試合巧者ぶりが表れている。

 課題だった投手陣に“形”が出来たことが大きい。先発では小川が復調。登板した3戦の防御率は1点台(1・42)と安定し、いずれもチームを勝利に導いた。当然のことだが、ローテーションの柱のあるなしで、戦力は大きく異なる。そして、石山を抑えとして計算出来るようになったことで、チームとしての勝ち方が確立。戦い方が明確になり、野手の攻撃に対する意識の面でも、好循環を生み出した。

 ヤクルト以外のセ5球団は、チーム状態の悪さが目立った。顕著だったのが広島。交流戦の防御率は5・60と、開始前のリーグ戦防御率(3・69)と比較しても大きく数字を落とした。巨人は開始前2割7分3厘あったチーム打率が、交流戦は2割4分8厘。DeNAは故障者続出に悩まされた。今年もパ・リーグが勝ち越したが、今季は戦力面というよりも、セに投打のバランスが崩れたチームが多かったことが、勝敗に影響したと感じた。

 結果的に、リーグ順位に大きな変動はなし。首位広島から最下位中日までが6ゲーム差と、ペナントレースは面白くなった。借金を大きく減らしたヤクルトがリーグ戦もかき回すか。投手力に不安がある広島は、どう立て直すか。見どころは多い。球宴までの約3週間の戦いが最初の鍵。ここでいかに勝ち星を積み上げられるか。優勝の行方を占う意味でも注目したい。(日刊スポーツ評論家)