日本ハムが余力を残しながら貯金を今季最多の12に積み上げた。ソフトバンク16回戦(札幌ドーム)は、2連投していた勝ちパターンのセットアッパー宮西を温存。終盤に2度追いつかれながら粘って勝利を手繰り寄せた。優勝争いが激化するシーズン終盤を見据えて、ブルペン陣をフレッシュな状態に保つ戦略を崩さずに大きな1勝を得た。はっきりと2年ぶりのリーグ制覇への道が開けてきた。

 同点に追いつかれた8回2死一、三塁。勝負どころで日本ハム栗山監督が投入したのは井口だった。勝ちパターンのセットアッパーではない3年目右腕は「いい場面で投げさせてもらったので、気合を入れていきました」。強打者内川に4球全て直球勝負。内外に投げ分け、最後は外の真っすぐで投ゴロに打ち取った。ピンチを脱出したその裏、打線が2点を勝ち越した。通算70試合目の登板でプロ初勝利をつかんだ。

 勝利の方程式を休ませながら勝ち取った、大きな1勝だ。2連投の宮西を登板させないことは試合前から決まっていた。1点リードの8回は宮西の代わりに左腕の公文。柳田に同点打を浴びたが、勝ち越されはしなかった。傷口を最小限にとどめられる代役がいる。だから余裕をもった継投が可能で、球宴明けもブルペン全体の疲労度が比較的少なく戦えている。

 開幕からブレずに慎重な戦略を実行してきた。今季は3日連続で登板したセットアッパーは2人。8回を任されるトンキンが1度、宮西が2度あっただけだ。6月以降に3日連続で登板したのは、開幕から抑えに抜てきされ、この日が3連投で3試合連続セーブを挙げた4年目の石川直のみだ。吉井投手コーチは「終盤の勝負がかかった時にブルペンが整っているようにやりくりしている」と話す。首位奪取の可能性がある一戦でも方針は変わらない。全ては2年ぶりのリーグ制覇のためだ。

 栗山監督は対ソフトバンク7連勝を決めても「まだ本当にここから。いよいよ勝負が始まる。最終的なイメージだけをもってやります」と冷静に言葉を選んだ。歓喜の秋をゴールとして、逆算しながらの選手起用で積み上げた貯金は今季最多の12だ。リスクマネジメントしながら上位をキープする日本ハムはラストスパートへの足を、まだためている。【木下大輔】