阪神が大逆転勝利で夏の長期ロードを締めた。5点を追う8回、1点差まで迫って迎えた2死一、二塁で、代打伊藤隼太外野手(29)が巨人池田から右越えに逆転2点三塁打。この回一挙6点で試合をひっくり返した。今季3度目となる対巨人3連戦3連敗目前で、虎打線が執念を見せつけた。明日28日からは1カ月ぶりに甲子園に戻って2位ヤクルトを迎え撃つ。

研ぎ澄ましたひと振りで、伊藤隼が大逆転の主役となった。代打の切り札は1打席勝負。極限まで集中力を高めて、絶好球を仕留めた。

「前の皆さんがほんとにつないでつないで、自分のところに回ってきたので、あまり深く考えることなく自分が狙った球を打とうと思っていました」

1点差に迫った8回2死一、二塁。ここで左腕池田に投手が交代。その初球を狙った。甲高い打球音が東京ドームに響く。次の瞬間、ドンッ。右翼フェンス直撃の起死回生2点適時三塁打で、ベンチを、スタンドの虎党を沸かせた。

「(初球打ちは)自分のスタイルなので。外野の位置を見て『どうかな? 抜けてくれ!』と思って走ってました。1点差っていうのは分かってたんですけど、(スコアを)ぱっと見たときに逆転してるなと。実感がなかったんで、ベンチの盛り上がりに自分も戸惑いました」

一挙6得点の猛攻で宿敵をノックアウト。5点差を一気にひっくり返す逆転劇を完結させた伊藤隼は殊勲の一打を振り返った。

試合前練習では、まず置いてあるティースタンドを目いっぱいに引き上げる。「最初は高めに設定してます。真っすぐに振り負けないようにね」。足を上げ、数秒間は静止。ゆったりとした打撃フォームでスイング軌道を確認する。イメージするのは試合を左右する勝負どころだ。「代打は初球を打つ準備ができてないと」。初球からフルスイングすることを想定した自己流のティー打撃が、実を結んだ。

巨人相手に3連敗を阻止。起死回生の逆転勝利で長期ロードを締めた。金本監督は「僕らはいつも負けられない。特に今日は負けられないなかで、本当に選手に感謝しかないですね。(伊藤隼は)左投手でしたけど、初球の甘いところをね。2アウトから一打逆転はなかなか打てないものですけど本当に思い切り良く打ってくれました」と殊勲打をたたえた。

明日28日ヤクルト戦からは甲子園に戻る。「ただの1勝かもしれませんけど、ほんとうに勢いのつく勝ち方だと思うので、来週からはまた甲子園。いい戦いをしていきたい」。1打席に懸ける伊藤隼が、本拠地でも魂を込めてバットを振り抜く。【真柴健】