絶対に諦めない。その心で、阪神梅野隆太郎捕手(27)が打線に火を付けた。打球を迎えた左翼スタンドも応援旗が大きく振られ、ようやく目を覚ました。5点を追う8回1死一塁。1ボールからの2球目だ。巨人沢村が投じた高めの153キロを上からたたいた。この日2発目、自己最多の8号2ランが大逆転の号砲となった。打線は打者10人を送り込み、5点ビハインドをひっくり返した。

「3タテは絶対されたくないと思っていた。ずっと諦めない気持ちでいられたのが、今日は一番でした。なんとかきっかけをつくりたいと思っていた。周りもつないでくれて、今までにない戦い方が出来た」

1発目は技ありだった。2点を追う4回の先頭で、巨人今村の142キロ直球を逆方向へ。3球続いたフォークをかわし、フルカウントに持ち込んではじき返した。腰の入ったスイングで、スライスの軌道を阻止。ライナーのまま右翼ポールを直撃した。最短距離弾は日頃のスイングのたまもの。片岡ヘッド兼打撃コーチが口を酸っぱくして伝えた「前のいいポイント」を体現。14年7月1日ヤクルト戦(倉敷)以来の1試合2発、今季2度目の3安打猛打賞に凝縮させた。

恐怖の8番打者だ。8月は20試合で月間打率3割3分3厘、4本塁打10打点をマーク。好調をキープしているが「試合に入ったら試合モードというか。試合に出ている以上は結果で貢献しないと。状態は気分良く打席には入れています」と淡々。大きな2発に金本監督は「すごいね(笑い)。小力というか、パワーもある。コツさえつかめば、振る力もだいぶ付いてきました。どんどん打ってほしいですね」と目を細めた。守って、打って。選手会長の梅ちゃんが、チームを導く。【池本泰尚】