今夏の高校野球100回大会の日刊スポーツ「編成部長」を務めた前ロッテのサブロー氏(42)が、独自の視点で前日25日のプロ野球ドラフト会議の「12球団通信簿」を付けた。12球団中11球団が高校生野手を1位入札した今ドラフト。4球団競合の大阪桐蔭・根尾昂内野手(18)は中日、報徳学園・小園海斗内野手(18)は広島、3球団競合の大阪桐蔭・藤原恭大外野手(18)はロッテが引き当てた。くじ運に左右される結果の中、各球団のドラフト戦略を探った。
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あらかじめ断っておきたいことは、ドラフトの評価は今の時点でできるものではない。2年後、3年後、あるいは5年後にどういう選手になっているか。プロに入れば当然その結果が勝負になる。あくまで現時点での評価をしていきたい。
最高の「5」は日本ハムと中日に付けた。日本ハムは根尾を外したが、外れ1位で金足農・吉田を指名。7人中5人が高校生で3~5年後に向けた、しっかりとしたビジョンが見える。4位の横浜・万波、5位の大阪桐蔭・柿木ら数年後大化けしそうな選手が多い。ビジョンを持ち、ドラフトで実行する。チームが安定した好成績を残すはずだ。
中日は根尾を当てた時点で100点だが、2位で東洋大・梅津を獲得できたことが大きい。東洋大3投手で、最も将来性があると評価するスカウトもいる。残っているとは思ってなかったのではないだろうか。
一方で「2」はヤクルト、巨人、阪神、オリックスにつけた。4球団とも1位のクジを(オリックス以外2回)外した不運もある。考えたいのは、特に下位チームの2位指名についてだ。今季6位の阪神は、ウエーバー順は全体14番目だった。外れ外れ1位で大阪ガス・近本、2位で高校生遊撃手の延岡学園・小幡を指名した。各球団の補強ポイント、評価があり、そこに意見するつもりはないが、例えば梅津もいた。全体14番目の2位は選択肢が豊富で、見極めや情報戦がより重要になる。チーム順位を考えれば、即戦力投手などバランスを重視した指名でも良かったのではないか。
巨人は2位以下は高校生5選手を指名した。2位の明秀学園日立・増田も1軍で活躍するまでには攻守において時間がかかるタイプ。FA補強なども考慮してか、3位以下は体の大きい選手が並び、将来性を重視したようにみえる。1位の根尾指名に異論はまったくないが、外れた段階で金足農・吉田もいた。指名してほしかったと思うファンも多いのではないか。抽選を2回外したヤクルトは即戦力投手、小園を外したオリックスは天理・太田を指名し、思い描いていたプランとは違う結果になった。
「4」は西武、ロッテ、広島につけた。西武は最近10年で6回目となる得意の一本釣りに成功。大リーグ挑戦濃厚な菊池の穴を埋めるため、即戦力右腕の日体大・松本を指名した。2位では将来性がある浦和学院・渡辺を獲得。今年はチーム状況を考えれば他球団も読みやすい展開の中で、的確に補強した。ロッテは藤原を引き当てた。今季は支配下選手が65人だったが、育成を含めて9選手指名した。70人の支配下登録枠を全部使って競争させるぐらいでないと、チーム強化は難しい。人数を多く指名した点は良かった。広島は1位で小園を引き当て、2位で即戦力投手、3位では将来性ある智弁和歌山・林を指名した。補強だけではなく、次世代を考えたバランスのいい指名だった。
「3」はDeNA、ソフトバンク、楽天。4年連続即戦力左腕を獲得したDeNAは、外れ1位で東洋大・上茶谷を引き当てるなど、3位まで即戦力選手。4位で投打に将来性の高い日大鶴ケ丘・勝又を獲得したことも大きい。ソフトバンクは1位の抽選を2回外したが、東洋大のクローザー甲斐野の指名に成功した。唯一補強ポイントのないチームだが、今季サファテ、岩崎らが離脱したブルペンに厚みが増す。楽天は外れ1位で立命大・辰己を引き当て、石井GMが熱望していた野手を補強した。3位の倉敷商・引地も将来性を感じさせる大型右腕だ。