阪神上本博紀内野手(32)が今季取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使せず残留する意向を固めたことが12日、分かった。球団はシーズン中から残留交渉を続け、上本は態度を保留していた。最後は左膝手術からのリハビリを支えてもらった感謝の思いが決め手になったとみられ、FA申請期間最終日となる今日13日に最終決断を下す。来季も縦じまに袖を通し、17年ぶりリーグ最下位からの逆襲に全力を尽くす。

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上本が悩み抜いた末、ついに虎残留を決断する。今季国内FA権を初取得。FA宣言も視野に入れて熟考を続けてきた。FA申請期間最終日となる今日13日に最終的な決断を下すが、この日方向性は定まったもよう。権利を行使せず残留する道を選ぶことになる。

球団は負傷明けの選手には異例ともいえる2~3年の複数年契約を用意し、シーズン中から残留交渉を継続。10月中旬には矢野新監督からも直々に「残ってほしい」と訴えかけられていた。この日も谷本球団副社長兼本部長は2日前に上本から「ギリギリまで待ちたいと思います」と報告があったことを明かした上で「残るという声を聞きたいですね」と切実な願いを言葉にしていた。

上本は球団や指揮官の誠意に心から感謝。その一方で、他球団の評価も聞いてみたいという、いち野球人としての思いとも正直に向き合ってきた。「じっくり考えたい」と熟考の姿勢を貫き、最後は虎への愛着、そして強い感謝の思いが心を動かしたとみられる。

今季は5月5日の中日戦で左膝を負傷。「左膝前十字靱帯(じんたい)の再建術」を受け、6月以降は地道にリハビリを続けた。夏場には「とにかく悔しい。チームが頑張っている時に自分は一体何をやっているんだろう、と…。大事な時期に力になれず本当に申し訳ない」と本音も吐露。この感情が残留決断の決め手となったと予想される。球団関係者によれば、上本はまだリハビリ中にもかかわらず身分が保証されることに違和感を覚えており、複数年契約を辞退して単年契約を結ぶ可能性が高い。

今季は左膝を負傷するまで20試合に出場し、4割2分2厘と脅威の打率を残した。パンチ力も兼ね備えたシュアな打撃と俊足、そして類い希な野球センスの持ち主。残留すれば来季、糸原とともに二塁レギュラーの有力候補に躍り出ることは間違いない。

秋季キャンプ期間中は鳴尾浜で練習を継続し、この日もランニングやノック、室内トレーニングで汗を流した。すでに打撃練習も再開しており、来春のキャンプ中には全体練習に合流できる見込み。今季最下位から14年ぶりのV奪回へ、矢野阪神に欠かせないピースが来季も縦じまユニホームに袖を通す。

 

◆上本博紀(うえもと・ひろき)1986年(昭61)7月4日生まれ、広島出身。広陵では甲子園に4度出場し、2年春には優勝。早大を経て08年ドラフト3位で阪神入り。14年に選手会長に就任し、同年の開幕直後に負傷離脱した西岡に代わって二塁のポジションを得た。16年限りで選手会長を退任。173センチ、71キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸は4300万円。