オリックスから阪神にFA移籍した西勇輝投手(28)の入団会見が14日に大阪市内で行われました。虎党の期待を背負う通算74勝右腕を取材してきた歴代担当記者がその素顔を披露します。

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こんなことを書くと怒られるかもしれないが、5年前の西のイメージは「よく食べる子だなあ」だ。当時はまだ23歳。食事は必ずといっていいほど焼き肉だった。東京・立川に行けばなじみの焼き肉屋に出向き、ひたすらタン塩と骨付きカルビを食べていた。最後に締めの特上ロースを食べようとして売り切れを告げられ、「マジか~」と子どもみたいに天を仰いでいた。

トングを片手にしても、いつも熱く野球の話をしていた。登板日に必ず黄色のパンツをはくことや、「きっと大丈夫」とつぶやいてボールにおまじないをかけること。「僕の野球人生が変わった」というプレートの一塁側を踏むようになったきっかけ。そして突然襲われた顔面まひのこと…。何より「ネコ(金子)さん」のすごさを語らせれば、口調にさらに熱を帯びた。

トングをキャッチャーミットに見立て、「光さん(伊藤)が構えたのがここだとすると、僕の球だと、ここになっただけで打たれるんです。ネコさんは球に圧があるし、絶対ここに投げられる」。トングを動かした距離はわずか10センチほど。「僕はコントロールがとにかく生命線」と言って、おしぼりでシャドーピッチングをしていたこともある。

いずれも5年前の話。結婚して焼き肉ばかりでもなくなっただろうし、今春の宮崎キャンプで1人ロードワークをする姿からは責任感もにじみ出ていた。でも、多分変わっていないだろうな、と思うこともある。基本的に先輩にも“ため口”で、かわいげがともすれば生意気と勘違いされてしまう性格…。そして、勝ちたい思いだ。

5年前のオリックスはお世辞にも強いとは言えなかった。それでも4月中旬には一時的に3位に浮上。あれは三宮の焼き肉屋でタン塩をほおばっていた時だったか。「Aクラスやで、なんかそわそわするわ! めっちゃ響きいいよね、Aクラス!」。これまでの西のプロ野球人生でAクラスは14年の1度だけ。たくましく、勝ちに飢えた焼き肉小僧が、阪神を変えるはずだ。【13年オリックス担当 池本泰尚】