巨人菅野智之投手(29)が「19年版速球」の片りんを披露した。オープン戦開幕の23日、楽天戦(沖縄セルラースタジアム那覇)に先発。2回2安打2失点も、最速151キロをマークした。全41球のうち、20球を投げ込んだ直球の平均球速は148キロ。昨季の最終登板でノーヒットノーランを達成したクライマックスシリーズ(CS)ヤクルト戦より格段にスピードアップした“超速球”が武器に加わる。

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ちゅうちょはなかった。1回2死、楽天浅村への初球。菅野は初コンビの炭谷のサインにうなずくと、膝元の内角いっぱいに150キロの速球を差し込んだ。「あの打席は、ある程度狙ったところに投げられた」と昨季3割30本100打点を記録した強打者を圧倒した。最後は内角のスライダーで体勢を崩させて遊飛。打席に立った浅村の「速さも感じましたが、制球がすごかったです」という証言がすごみを物語っていた。

「直球」ではない「速球」に独特の思考を持っている。「僕の感覚としては、ストレートは『一番球速が速い変化球』だと思っている。フォーシームも、全く同じ軌道のボールはない。意図しなくても、微妙に変化はしている」。球界屈指の変化球と制球力を武器に相手打者をなぎ倒してきた。さらなるスケールアップの過程の中で、最強の球種として、頭の中には同じ軌道が2度とない「速球」がある。

今季初実戦は「ストレートを中心にこのキャンプは磨いてきたつもりなので、どこまで通用するか」とテーマを設定。2回の楽天ブラッシュには、151キロが、やや中へ高く入り、左中間席に運ばれた。「少し、意気込みすぎた。自分をコントロールできなかった」と今季初実戦マウンドで気持ちの力みが出た。それでも150キロ超えを4球も計測した。「ノーノー」を達成した、昨季CSヤクルト戦の速球の平均球速は144キロ。開幕前の現時点で、昨季からの上積みを明確な数字で示した。

あぶり出た課題は大勢に影響ない。「ちょっと体が軽すぎる部分がある。投げ込んで、もう1回体を張らして、自分の感覚を呼び戻したい」と今後の道筋を明確にした。次回登板は3月2日からのオープン戦ヤクルト2連戦(東京ドーム)が有力。「後ろ向きなことは一切ない。ただ、もう1回これを繰り返すようでは話にならない。しっかり修正します」。目線を上げて、自信と責任を入り交じらせた。【桑原幹久】

◆菅野の昨季CSヤクルト戦・速球VTR 序盤は140キロ台前半の遅い球で組み立てた。勝負どころの山田哲、バレンティンにも最速149キロだった。2戦連続で中4日での登板ということもあったが、150キロを超える直球はなかった。主に変化球をコーナーに制球。ヤクルト打線に的を絞らせず、CSでは史上初のノーヒットノーランを達成した。