入手困難な広島の公式戦チケットを巡り25日、マツダスタジアム周辺が大混乱に陥った。従来の先着順に代わり、今年は購入に必要な抽選券を配る新方針が導入されたが、配布場所の同球場に、想定をはるかに超える推定5万人のファンが殺到。

周辺の交通がまひし、鉄道の運行に影響が出る可能性も出てきたため、途中で配布が打ち切られた。納得できないファンが抗議を続けた。

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大群衆が「抽選券」を求めてマツダスタジアムに殺到した。配布開始は1時間20分早められ午前9時40分となったが、極太の列はどんどん長くなる。球場まで600メートルの位置にある愛宕踏切周辺まで人があふれた。踏切内に人が残ると鉄道の運行に支障が出る。JRから苦情が入った。警察から指導も入った。球場に向かう道という道が人で埋まった。同11時、ゲートが閉められた。

ファンの誘導プランは、球場につながるスロープ「プロムナード」から球場に入れ、コンコースを反時計回りで1周したところで抽選券を渡し、左翼ポール際の階段から退場してもらうもの。想定したのはコンコースに1万人、プロムナードに5000人、プラスアルファの最大2万5000人。昨年の2600人の約10倍を見込んだが、月曜日にもかかわらず、想定の倍の人数が押し寄せた。

島井誠入場券部長(63)は「安全を考え、プロムナード内にいる人まででカットした。抽選券は5万枚用意したが、何枚渡せたかはわからない。たいへん申し訳ない」と説明した。さらに「救済措置は混乱に拍車をかける。あえてやらない」と話した。もらえるはずの抽選券を手にできなかったファンが抗議を続けるなど、混乱は続いた。「なんでもらえんのじゃ」「ちゃんと説明せえ」と、怒号が飛び交った。

広島は今季のチケット販売を、従来の先着順から、チケット購入整理券を得るための抽選券を配布する新方式に切り替えた。2日分計2100人と購入順を決め、3月1、2日に公式戦70試合の任意の一部指定席を窓口で購入できるようにした。昨年までは球場周辺にテントなどで場所取りすることが常態化。購入順をめぐってけんかが多発し、転売が目立つなどトラブルが絶えなかった。それを改善するはずが、想定外の問題に襲われたことになる。

広島のチケットは近年、入手が非常に難しくなっている。黒田博樹、新井貴浩が復帰した15年ころから人気が沸騰。16年からセ・リーグを3連覇して拍車がかかった。カープ女子は社会現象にもなった。マツダスタジアムは毎年のようにリニューアルされ、付加価値も増している。今回配布された抽選券で当選し、整理券を入手すれば、確実に観戦できることになっていた。

チケット問題は来季以降も大きな課題となる。先着順なら多くの問題が残り、整理券制も大幅な改善が求められる。広島が人気球団ゆえの問題に頭を抱えた。

○…最近のチケットフィーバーで思い起こされるのが、昨夏の甲子園100回大会だ。大阪桐蔭が第1試合で出場した8月13日は、午前6時40分に満員通知。前夜の午後11時時点で、徹夜組の一塁、三塁の特別自由席チケットを求める列は、甲子園駅前まで延びて道路沿いへ折り返した(この日の総入場者数は7万人)。この大会からチケットの販売方法が変更され、外野席が有料化。バックネット裏も全席が前売りの指定席として販売された。徹夜組などによるトラブル予防が目的だったが、甲子園ファンの熱が長蛇の列をつくった。