セ・リーグ開幕前哨戦で、王者広島にGキラー誕生の気配だ。3年目左腕の床田寛樹投手(24)が巨人とのオープン戦(マツダスタジアム)に先発し4回無失点と好投。昨年までチームメートだった巨人丸から空振り三振を奪うなど、6奪三振で圧倒した。トミー・ジョン手術を乗り越え、開幕ローテーション入りに大前進。昨年広島は同カードで17勝7敗1分けだったが、若きサウスポーが新たに戦力として加わりそうだ。

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2ボールとカウントを悪くしてから、床田が敵となった丸に真っ向勝負を挑んだ。1回1死走者なしで巨人新打線の鍵を握る2番打者を迎えていた。144キロの直球を2球続けて空振りを取ると、最後も直球。148キロでみたび空を切らせた。丸を含め、初回先頭から4者連続奪三振の滑りだし。3回は2死一、二塁、4回は連打で1死一、二塁とそれぞれピンチを招いたが、落ち着いて後続を断った。紅白戦含め実戦4試合で12回無失点とアピールを続け、開幕ローテを決定づけた。

「あまり左打者のインコースに投げられなかった。シーズンが始まるまでに、もっと厳しく投げられるようにならないといけない。(内容は)良くなかった。甘い球が多かった」

厳しい自己評価だったが、テンポいい投球は新たなGキラー誕生の予感が漂う強烈なインパクトを残した。昨季、巨人の対左投手のチーム打率2割3分2厘、148打点は、いずれもリーグワースト。広島ジョンソンに2勝、DeNA東に5勝、中日ガルシア(今季阪神に移籍)に3勝を献上するなど、各球団の左投手に苦しんだ。床田が17年にマークした唯一の白星であるプロ初勝利も巨人戦だ。

何よりこの日の4回67球、4安打6奪三振無失点の快投が、能力の高さを物語る。17年にトミー・ジョン手術を受け、1年間マウンドから遠ざかった。ボールさえ握れない日々を乗り越え、2年ぶりの「開幕」を迎えようとしている。この日上がったマツダスタジアムの1軍マウンドは、左ひじを痛めた17年4月19日DeNA戦以来。「(17年に痛みが走った)2回の初球は怖かったんですけど、しっかり投げられたのでもう不安はなくなりました」。苦い記憶も振り払った。リーグ4連覇を目指す王者に頼もしい男が加わった。【前原淳】

◆床田寛樹(とこだ・ひろき)1995年(平7)3月1日生まれ、兵庫県出身。箕面学園から中部学院大を経て16年ドラフト3位で広島入団。17年に3試合に登板し1勝1敗、防御率5・19。昨季は1軍戦登板なし。181センチ、85キロ。左投げ左打ち。

◆続々と投手が台頭する広島

16年 エースだった前田がドジャース入り。前年5勝に終わった野村が開幕から絶好調で16勝3敗、防御率2・71と抜群の安定感を誇った。最多勝、最高勝率のタイトルを獲得し、黒田、ジョンソンと強力な3本柱を形成した。

17年 精神的支柱でもあった黒田が現役を引退するも、右の本格派である薮田と岡田が台頭した。薮田は15勝3敗で最高勝率のタイトル。岡田もチーム2位の12勝をマークした。

18年 盤石と思われた薮田、岡田の調子が上がってこない中で、解禁となった2段モーションを駆使して大瀬良が本格化。15勝を挙げ最多勝を獲得した。

▽広島佐々岡投手コーチ 真っすぐで空振りが取れていた。真っすぐは(打者の手元で)動くこともあるし、力強い。(投手の中で)今一番目立っている。キャンプからずっといい結果と内容を見せてくれている。

▽広島緒方監督 問題ない。あれくらいはできる投手だと思っている。これからさらに成長できるように経験を積ませていきたい。

▽広島会沢 堂々と投げていた。ピンチでもおどおどせずに投げてくれて良かった。(真っすぐは)きれいな回転のときもあれば、ジャイロ回転のときもある。