低迷打開の光だ! 阪神才木浩人投手(20)がDeNA打線を6回途中まで1失点に抑え、今季初先発で初勝利を挙げた。昨年6勝を記録したが、今季は調子が上がらず開幕を2軍スタート。メッセンジャー、ガルシアと主力投手が2軍調整中と苦しい台所事情にあって、若手右腕の好投は明るい材料になった。DeNAに連勝し、5カードぶりの勝ち越しを飾った。

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無理してオトナになる必要なんてなかった。マウンドに立つ才木の胸中は、燃えていた。「やっぱり、ピッチングは『満力』です。いろいろ工夫して考えて投げてましたけど…。今は全力で投げてます!」。答えにたどり着いた20歳右腕の表情はスッキリとしていた。

先発陣の相次ぐ離脱で巡ってきたチャンスを、見事にモノにした。今季初登板初先発は6回途中1失点で白星をゲット。矢野監督からも「球も力があった。まだ伸びしろもある。これから年間を通して頑張ってくれたら」と認められた。

ただ、反省は忘れない。6回の失点。ソトにタイムリーを浴びた1球だ。146キロ直球で内角を突いたが、詰まりながらも適時打を許した。「意識は高低よりもコース。バットをへし折るぐらいの強いボールを投げていきたい」。1つでも上のステージへ。自然と言葉に思いがあふれる。

プロ3年目。環境にも慣れてきた。心にも余裕が生まれ、「力」でなく「技」を磨こうと創意工夫を重ねた。「キャンプ中は6割の力や8割ぐらいで投げて、というのをやろうとしていたんです…」。握りの違う直球やタイミングを変える「抜き真っすぐ」にも着手。「深く握らずに投げてみたり、投球の奥行きを意識した。タイミングを外すことだけを考えていました」。緩急に重点を置くことばかりに気をとられ、持ち味であった直球の威力は影を潜めた。「まだ自分のレベルではできなかった。それに、今の自分には合ってなかった」。

目指した開幕ローテーションから脱落。結果が出せない自分にムシャクシャした。訳もなく叫びたくなる日もあった。それでも鳴尾浜で自らの現在地を見つめ直した。「もう1度フォームだとかリリースを見直す時間。そういう時間だと思うようにした。はやく1軍にという気持ちも強かった。でも、このままでは絶対にダメ。1軍にいるだけじゃなくて、投げて勝てないと意味がない」。

迷えば原点へ-。悩み抜いたから、今がある。「ダメなときもある。もう1回、自分を底上げして(先発ローテを)奪うだけです」。迷いの消えた20歳が先発ローテーションの救世主になる。【真柴健】

 

▽阪神福原投手コーチ(先発した才木に)「よく投げてくれました。いいボールが多かった」