主将のメモリアル弾が、チームをよみがえらせた。日本ハム中田翔内野手(30)が西武12回戦(メットライフドーム)の5回に10号ソロを放ち、9年連続2桁本塁打を達成した。試合前半はミスも相次ぐ重い展開も、中田の節目の1発で悪い雰囲気を一掃。チームは最大4点差をはね返す逆転勝利で連敗を2でストップした

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一振りで、勝利の女神を振り向かせた。中田が試合の流れを変えた。4点を追う5回2死無走者。フルカウントに追い込まれていた。「割り切っていた。自分のスイングをしようとしていたので、それがハマってくれてよかった」。直球に絞り、ドラフト1位ルーキー松本航の145キロ直球にアジャスト。力感なく、それでもしっかりと振り切ってとらえた打球はバックスクリーンへ飛び込んだ。

反撃の10号ソロで、9年連続2ケタ本塁打を達成した。「そんなん、どうでもいいし」と、ぶっきらぼうに話すが、節目の1発でチームは息を吹き返した。ミスが続出した試合前半から一転、中盤以降は押せ押せムードに変わった。中田は7回に犠飛で同点のお膳立てをし、8回には勝ち越した直後に貴重な追加点となる中前適時打。主将が、4点ビハインドをはね返す逆転勝利の旗手となった。

チームの顔として、開幕から奮闘を続ける。試合後に息を切らしながらメットライフドームの長い階段を上っていった中田は「たまってるよ。移動試合はやったらアカン。一気に来る、疲れが」と漏らした。今カードの初戦は札幌から所沢へ当日移動の試合で、肉体的にはこたえる日程。だが、キャプテンはここまで、大田とともに開幕からスタメン出場を続ける。根底には「チームの勝ちにだけ、こだわってやっていきたい」という使命感。個人記録よりも、勝つことへの執念が体を突き動かす。

打てば流れを変えられる存在だけに、ちょっとした感覚も大事にしている。5月23日楽天戦の試合前には、バットのグリップエンド部分を入念に紙ヤスリで削った。「何か、ひっかかる」とL字型のグリップへの違和感から、なだらかに太くなっていくタイカッブ型のようなグリップに自ら加工。必死に削ったその日に9号本塁打が飛びだし、そこからの4試合で12打数5安打、打率4割1分7厘、2本塁打、6打点。「やっぱ、削らんとな」とメーカーにタイカッブ型は発注する予定はなく、プチ験担ぎを継続するつもりだ。それも全て、チームの勝利のため。「上沢にも勝ち付いたし、よかったね」。苦しい時こそ、中田キャプテンが頼りになる。【木下大輔】