本拠地におかえり!大腸がんから再起した阪神原口文仁捕手(27)が1軍公式戦では昨季10月10日DeNA戦以来、240日ぶりに甲子園へ舞い戻った。

代打で三振に倒れるも気迫で暴投を誘い、一時同点を演出した。

雨上がりの聖地に響く「代打原口」のコール。黄色く染まった球場は、大歓声で包まれた。6回、1点に迫り、なおも2死二、三塁。初スイングは有原の2球目、148キロの直球にファウルで食らいついた。カウント2-2からの5球目、有原のフォークはワンバウンドで暴投となった。打席の原口は三塁走者大山に来れる!と手招きでジェスチャー。生還した大山とハイタッチで喜んだ。

だが、2死三塁となり、続くスライダーに空振り三振を喫した。「ああいう(好機で)使ってもらっている。結果を残さないと」と、悔しさをにじませたが、復活した背番号94には、惜しみない拍手と歓声が送られた。

復帰戦となった敵地ZOZOマリンでの4日ロッテ戦と同じく、この日も打席に入る前、右翼スタンドに一礼した。常にどんな時も謙虚な気持ちを忘れない男らしいシーンだった。

暑さが増した5月上旬の2軍鳴尾浜。午前練習を終え、選手を待つ若手記者に原口がサッと声をかけたことがあった。「暑いでしょう」の言葉とともに、冷たい飲み物を差し入れ。実戦復帰を目指し厳しい練習を積む中でも、周囲に心配りをする原口だけに、本拠での大歓声は心に染みたに違いない。

原口「(声援について)ほんとにすごくありがたい。自分でも聞こえていた。緊張感のある中でやれている幸せを感じている」。

矢野監督は原口の代打起用に「フミ(原口)は昨年もそうやし。大事なところでいくことがこれからも多くなっていくと思う」。次こそ、甲子園で快音を響かせてくれる。聖地に原口という希望が帰ってきた。【奥田隼人】