広島が2位に浮上した。エース大瀬良大地投手(28)がDeNA19回戦に先発し、9回5安打2失点で完投勝利。3年連続4度目の2ケタ勝利を飾った。同じ背番号14を背負った故津田恒実氏へのリスペクトを胸に、首位巨人を追いかける1番手の座を奪った。

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“1球入魂”の投球でDeNA打線を封じた。左翼から右翼方向へ強い風が吹く中、大瀬良は序盤、力で押した。3回までの37球中、カーブ7球をのぞき、30球は直球とカットボール。今季登板前までDeNA戦3試合で0勝2敗、防御率6・11と苦手な相手にも、真っ向勝負を挑んだ。

力と力の真っ向勝負だけではない。中盤からはDeNA打線の目先を変えるように、変化球を増やした。登板前から「真っすぐ系にヤマを張ってきていると思う。それを確率よく打たれているのがこれまでの結果」と警戒していた。4回にスライダーとフォークを解禁。2本の長打で2点を失うも、動揺はなかった。「配球の意図をくみ取りながらアウトが取れた」。リードが2点に広がった6回、7回は半数近くがフォーク。直球と横変化が多いイメージを逆手に取った。

気持ちは熱く、冷静に。「風向きだけは毎回確認していた。とにかく低めに集めてというのはこれまで以上に強く持っていた」。8回以降は当たり前のように志願して上がった。今季5度目の完投勝利で3年連続2桁10勝目。チームを2位に浮上させた。

前回の勝利がまたひとつ大瀬良に自信を与えた。今季9勝目でプロ通算50勝。広島で背番号14を受け継いだ偉大な先輩津田氏の勝利数を超えた。抑えを主戦場とした先代と役割は違っても「何か1つ、津田さんの数字を超えることをひそかな目標にしていた」と背番号を受け継いだ使命を強く感じていただけに特別な白星となった。

エースで上位対決のカード初戦を取り、再加速のきっかけをつかんだ。緒方監督は「大地の投球に尽きるでしょう」と最敬礼。「僕たちは1戦1戦目の前の試合を戦っていくだけ。ファンの皆さんと一緒に戦っていきたいと思います」と大瀬良。まだ頂点を諦めてはいけない。“弱気は最大の敵”だ。【前原淳】

広島会沢「いろんな球種のサインに対して、大地がしっかり投げてくれた。(カードの)頭を取れたのは良かった」

広島佐々岡投手コーチ(先発大瀬良に)「変化球を低めに集めてゴロアウトを取れた。(カード)初戦に、この完投は大きい」