最後も渾身(こんしん)のストレートだった。阪神藤川球児投手は一息つくと、1球に力を込めた。内角低めに決まった144キロ直球に、柴田のバットは出なかった。「いい勝ち方だった。今日はいい展開でしたし、明日以降もいい流れでいけるように」。目指す逆転CSへ、チーム一丸の戦いを最後にビシッと締めた。

魂の8セーブで、積み上げてきたセーブ数は233。歴代4位で現役最多を誇るソフトバンク・サファテの234セーブにあと1と迫った。「全く興味はないです。そのへんの役回りなので、チームに貢献することがやりたいこと」。それでも大リーグ時代の2セーブも加えると、名球会入り条件の250セーブにあと15。残り試合28試合だが、チームが白星を重ね続ければ今季中の達成も夢ではない。阪神の救援投手では球団初の偉業だ。

この日はドリスの復帰後、守護神藤川につなぐ新勝利の方程式が鮮やかに決まった。先発秋山の5回1失点を受け、1点リードの6回は2番手岩崎が登板。2死一、三塁のピンチにも動じず0封した。連続試合無失点も12戦に伸ばし、防御率は0・76と驚異の安定感を誇る。7回はドリスが3人で、8回はジョンソンが中軸を3者凡退に抑えた。

ドリスが1軍に再合流した前日20日。金村投手コーチは「最後30試合、みんなで頑張ろう」とリリーフ陣に話したという。今年の春季1軍キャンプの最終日。藤川も投手の円陣の中で団結を呼びかけていた。「みんなで切磋琢磨(せっさたくま)というよりは、協力し合って、なんとか去年の悔しさを晴らしましょう!」。39歳の守護神は、精神的にもブルペンの柱だ。

矢野監督は藤川の抑えについて「外す理由があるわけでもない。球児らしい球を投げられているし、経験も豊富な投手なので任せています」と変わらぬ信頼を口にした。藤川も「厚みに甘えず自分のやるべきことをやるだけです」と気合十分。鉄壁の新方程式で逆転CSを目指す。【磯綾乃】