魔の5回。広島野村祐輔投手(30)が5回4失点で5敗目を喫した。4回までは粘り強く投げながら無失点に抑えるも、5回に暗転。1点差に迫られると、坂本勇に特大逆転2ランを被弾した。さらに岡本にも1発を浴び、一挙4点を失った。

首位巨人を追走するためには負けられない一戦で、リードを守り抜くことができなかった。再び首位巨人と6・5ゲーム差となり、4連覇が厳しい状況となった。

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粘り強く投げていた緊張感が切れたかのように、野村の制球に狂いが生じた。2-0の5回。1死二塁から亀井に高くなったカットボールを右翼前に運ばれて1点を返されると、エアポケットにはまったように制球が甘くなった。巨人打線でもっとも警戒していたはずの坂本勇への初球シュートが中へ。打たれた瞬間、打球方向を見ることすらできなかった。看板直撃の逆転2ランが球場の流れとともに、試合展開を大きく変えた。

2死後には岡本にバックスクリーンに運ばれ、この回だけでスコアボードに「4」がともった。「5回は投げミス。単調になってしまった」。前回敗れていた菅野へのリベンジを狙ったが、またも中盤で崩れた。前回は7回に勝ち越しを許し、この日は5回に逆転を許した。難敵相手のビッグイニングは、あまりにも大きなダメージとなった。

野村の組み立ての鍵となる球種の1つ、チェンジアップの精度を欠いたことで組み立てを苦しくした。4回まではカーブで緩急をつけながら、丁寧な投球を心掛けた。球数は74球を要し、4四球を与えてもゼロを並べた。5回は慎重な投球から一転、一気に崩れた。

重要な試合だと分かっていた。だからこそ序盤から慎重に慎重を期した。「悪くはなかった」だけに、5回の投球が悔やまれる。試合後の野村は口数が少なく、敗戦の責任を一身に背負ったように、うつろな表情で球場を後にした。

首位巨人とゲーム差は再び6・5ゲームに広がり、厳しい状況に立たされた。緒方監督は「また明日。厳しい戦いは前からだから、また明日」と懸命に前を向く。数字上の可能性を残す限り、ファイティングポーズをとるのがプロ。残された試合で、王者としての意地を示さなければいけない。【前原淳】