ソフトバンクが3連勝で球団史上初、92年西武以来27年ぶりの3年連続日本一に王手をかけた。CSから采配の光る工藤公康監督(56)は早めの4回、代打の切り札・長谷川勇也外野手(34)を投入。

打撃職人はこの起用に1球で応え、決勝の左犠牲フライを放った。DH制のない東京ドームでデスパイネを左翼起用すると、一時勝ち越し打を含む3打点。継投もズバリ的中した。2年連続の下克上まであと1勝だ。

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CSから、幾度となく流れを引き寄せ続けている工藤監督のタクトはこの日も鋭かった。同点の4回1死満塁、1番川島に対して代打長谷川勇をコール。「取れるときにしっかり取るのが一番。思い切って勝負に行かせてもらった」。勝負どころとみればイニングは関係ない。惜しげもなく注ぎ込み主導権を握るのが短期決戦の極意だ。

指揮官の迷いない起用に長谷川勇が応える。コツリ、コツリ、コツリ。両足で交互にバットを蹴りながら、打席まで歩を進める。バットを持った右手をだらりと下げ、バットの先から手首、肩を連動させてクリクリと回す。呼吸を整え、鋭い目が相手投手をとらえたら戦いの始まりだ。生粋の打撃職人は巨人戸郷の初球をあっさり左翼まで運んだ。決勝犠飛で勝負あり。「ゲーム展開を予測しながら準備はしていた。シンプルに強く打ちに行って、あとはボールに聞いてくれ、という感じでした」。1分にも満たない仕事を済ませ、さっそうとベンチに帰った。

普段より早い出番でも、打席に入るルーティンは変わらなかった。長谷川勇にとって打撃とは「絵を再現するようなもの」だという。独特な、1つ1つの動きが持つ意味は言葉では説明しきれない。「練習から仕留める準備はしている。そこには自信がある」。日頃から積み重ねた練習で完成した“最高の絵”を本番でもう1度描きなおす。より最高に近づけるように。再現性を高めるために。試合中のどんな場面、どんな時間にやってくるかわからない代打の出番。その一瞬のために、ルーティンを丁寧にこなすことに意味がある。

指揮官の信念の采配は、代打策だけではない。DH制が使えない敵地だが、第1、2戦で無安打だったデスパイネを左翼で4番起用。その期待は2本の適時打で返ってきた。得意の継投策もさえた。1番から始まった5、6回を2番手石川が6人で抑え、流れをぶった切った。

攻めの采配で、CSファーストS第2戦からの連勝は9まで伸びた。巨人に3連勝で3年連続日本一まであと1つ。「何が起こるかわからないのが日本シリーズ。今日が終わったら、明日の試合。とにかく全力で勝ちにいく」。最後まで、手を緩めるつもりはない。【山本大地】

◆ソフトバンクが3年連続日本一に王手。シリーズ3連覇を達成すれば、90~92年西武以来となる。西武は90年、巨人に4戦4勝。91年は広島、92年はヤクルトに各4勝3敗。森監督が率い、秋山、清原、デストラーデ、石毛が中軸を打った。91年は工藤(現ソフトバンク監督)が2勝。