阪神が新外国人として契約合意したジャスティン・ボア内野手(31=エンゼルスFA)はどんな選手なのか。メジャー担当の斎藤庸裕記者が素顔を明かします。

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飛距離だけでなく、諦めない粘り強さがボアの魅力でもある。今年4月23日のヤンキース戦、8回無死から中堅右へ豪快な満塁弾を放った。甲高い打球音。捉えた瞬間に本塁打を確信させる当たりは、1-7から2点差に詰め寄るグランドスラムだった。「とにかく戦い続けるということ。結果が出てうれしい」。試合には敗れたが、劣勢だったチームの士気を高めた。

ネバーギブアップ-。ボアの姿勢を示す一撃でもあった。4日前のマリナーズ戦でのプレーで、どん底に落ちた。8回1死一塁。一、二塁間へ高々と打ち上げた。打球を見上げ、捕球されると見て走らなかった。マ軍の内野手にわざとボールを落とされ、ゴロとなって難なくダブルプレー。「言い訳はない。恥ずかしい。野球を始めた時に習うようなこと。本当に最悪なプレーだった」と大失態を潔く認め、受け入れた。

翌日、特打に自主参加し、オースマス前監督の姿を見て自ら歩み寄った。「彼に謝りたかった。恥をかかせてしまった。あのプレーについて(メディアから)質問をされ、答えさせてしまったから」。起用してくれた監督へ合わせる顔もなかったかもしれない。それでも一歩踏み出した。「両親にそう、教えられてきたからね。ミスをしたら、しっかり認める。そうやって育てられてきた」。

どん底から自らを奮い立たせるには、エネルギーも必要だろう。だが、強い向上心がボアの足を動かした。「次の日には、チームの何か役に立てるチャンスがある。落ち込んで動揺し続けていたら、自分の成長、また前に進んでいく機会も失うことになる。2度と同じことをしない。前に進む。この2つを心がけたよ」。ポジティブさは強みとも自負する。特打を毎日続け、大失態の4日後に満塁弾。結果のすごさ以上に、屈強な精神力を感じさせた。【MLB担当=斎藤庸裕】