阪神若武者近本光司外野手が1番に定着し、阪神打線は活性化したかのように見える。ところがこの重要な打順が、十分に機能したとは到底言い難い。今季スタメン1番打者の合計出塁率2割9分2厘は、セ・リーグ最下位。そして球団では、71年の2割8分9厘以来、実に48年ぶりに3割を割り込んだ。

初回先頭打者に限れば、出塁率は2割7分3厘へとさらに悪化する。1回の1番バッターは全143試合中、実に104試合で凡退している。先発投手にとって永遠の難関といえるのが「立ち上がり」。先制パンチを見舞うことができず、相手を楽にした。これが響いたのか、阪神の1回のシーズン総得点は63点で、今季セ・リーグ最少だった。また、先制できたのは68試合で、これはヤクルト61試合に次ぎセ・リーグのワースト2位である。球界屈指の救援陣を誇っていても、試合の序盤で後手に回っていては苦しい。

1番打者として先発したのは計7人いた。最多は近本の108試合で、この間打率2割6分4厘。新人選手としては及第点でも、打線のけん引役としてはやや物足りない。近本以外の6選手の合計は、147打数29安打で1割9分7厘という不成績に終わった。新外国人ボアは4番候補で、ドラフト補強は高校生中心。そして近本には、2番構想が持ち上がっている。来季のリードオフマンは、現有戦力の中にしかいない。何が何でも塁に出る、という条件を満たす選手に奪い取ってほしい。【記録室・高野勲】

◆出塁率 1打席当たりの出塁する確率を表す指標。計算方法は(安打数+四死球数)÷(打数+四死球数+犠飛数)。最高は10割となる。四死球を評価している点が打率との違いで、出塁率では本塁打も四死球も同等の価値を持つ。