阪神近本光司外野手(25)が新春インタビューに応じ、東京オリンピック(五輪)が開催される20年シーズンへの思いを語った。他競技の一流アスリートや、侍ジャパンで活躍する同世代から刺激を受け、力に変える。盗塁へのこだわりや2年目のジンクス、そして父として-。必要不可欠な選手となった近本が、20年も俊足好打で猛虎を引っ張る。【取材・構成=奥田隼人】

東京に五輪がやってくる20年。近本は普段から水泳やバレー、ラグビーなど野球以外のスポーツもチェックし、一流アスリートから刺激を受けている。五輪で観戦したい競技に挙げたテニスからはメンタルコントロールを学ぶ。

近本 テニスの、あの長い試合時間をどうやって(精神的にコントロールしているのか)。感情を表に出す人が多いじゃないですか。でも、僕の中では感情を表に出すことはあまりよくないのかなと思っていた。いかに冷静にするのか。冷静の上に、何か熱くなる要素を加える。それが僕の中では一番よかった。そういうところをどうやっているのかというのを、見たいです。悪い時は(感情が)「ワーッ」となってしまう。その切り替わるところを見たいなと。ジョコビッチとか、いろいろ世界的にも有名な選手を見たいですね。

社会人大阪ガス時代には、日本代表も経験。侍入りへの思いには、謙虚に「頑張ります」と控えめだった。19年秋のプレミア12では、日の丸を背負った広島鈴木が4番で活躍。同学年の存在は、近本をさらに加速させる。

近本 (代表は)力が入りますね。いいところを見せないといけない。打てなかったら「日本は打てない」と思われてしまうので。プレミアとか見ていたら鈴木誠也。ああいうところで活躍できるのは、自分としてはすごいなと思います。(プロ)2年目になると、2年目と見られなくて、年齢で見られる。そういうところで鈴木とか(広島)西川、(中日)京田や(阪神)大山とか。そういうところと比べられると思うので、少しでも追いついていけるように、やっていきたいですね。

来季の目標は、ブレずに「2年連続盗塁王」を掲げた。今季よりも4個多い40盗塁を目指し、盗塁の魅力も伝えていく。

近本 (2年目は)40個を狙って走ります。盗塁王というのが一番、見栄えがいい。チームのために貢献する、いい盗塁をすれば、僕はそれでいいと思っている。それで(本塁に)かえってくることができれば、いい走塁になる。盗塁はその機会を増やすことだと思う。それをするには盗塁をしないと、数をこなさないとできない。ただただ、走るだけが目的じゃないんですよね。ホームランは正直、芯に当たって角度がついて、振り抜ければ誰でも1本は打てると思う。でも、盗塁は何かない限り、誰でもできるわけじゃない。その難しさというのもたぶん、一般の人も分かっていると思う。そういう駆け引きというか「いつ走るんだろうな」「なんで走らないんだろうな」というのを見て、楽しんでもらいたいですね。

走るには出塁が絶対条件で、四球もその手段の1つ。だが、近本は今季四球率(四球÷打席数)でリーグワーストに終わった。来季に向け、自らの信念を貫く考えだ。

近本 四球を増やすためにというのは、消極的な考えだと僕は思っている。しっかり振りにいってボール球を振らないという考えの方が、僕はいいと思う。しっかりストライクを振りにいく、甘い球を打ちにいくというのはやっていこうと思っています。(目標安打数は)「150」という数字は、しっかり打ちたいなとは思っています。調子がいい時もあれば、悪い時もある。しっかり毎年、150という数字をベースにしていきたいです。(打率は)今年よりは上を。2割8分ぐらいは打ちたいなと思いますね。

2年目のシーズンには「ジンクス」という言葉がつきまとう。しかし近本の辞書に「2年目のジンクス」は存在しない。気にせず、前を向く。

近本 「2年目のジンクスに向けて」という質問の時点で2年目のジンクスになることが想定じゃないですか。結局、いつかはいい成績が出て、いつかは悪い成績が出る。僕はその壁が2年目であろうが、3年目、4年目であろうが、どこかで来ると思う。その時に自分がどう思うか。打てない時は、何をしても打てないので。その時の感情や、どう思っているかを次の年に生かせるように。僕はそういう風に、やりたいなと思います。

昨年7月には第1子となる長女が誕生。愛娘からパワーをもらいながら、父として家族というチームも支えていく。

近本 (娘の存在は)めちゃくちゃ力になります。一緒にいられる時間は少ないですけど、一緒にいると楽しいし、分からないことやできないことがほとんどなので(笑い)。妻のサポートもしっかりしていきたいと思いますね。

1年を経て、公私ともにたくましくなった背番号5。チームの大黒柱として、15年ぶりのリーグ制覇に貢献する。

◆1年目の近本 新人ながら「2番中堅」で開幕スタメンを勝ち取り、開幕戦でプロ初安打初打点を記録。5月には、01年赤星の球団新人記録を更新する13試合連続安打を放った。新人で唯一選出された球宴では、第2戦で初回先頭打者本塁打を含むサイクル安打を達成。MVPを受賞した。シーズン142試合に出場し、リーグ新人最多安打記録を更新する159安打。36盗塁で盗塁王に輝き、新人特別賞を受賞した。