日刊スポーツ評論家で元中日監督・山田久志氏(71)の「球論」は、1週間早く開幕する今春キャンプの調整法がテーマです。

阪急で日本記録の12年連続開幕投手、通算284勝をあげた最強サブマリンが独自の考えを展開しました。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

キャンプインが近づいてきたが、今年はどのチームもちょっと様相が違うだろう。東京オリンピック(五輪)の影響で開幕が1週間早まることで、特に先発ピッチャーの調整が非常にやっかいになる。

オフに会ったどの監督も早めの調整を心掛けると話した。だれもが同じことを言うが、スピード調整は当然のことでも、これが周りが言うほど簡単じゃないってことだよ。

昨季までのスケジュールでいくと、大体の先発投手は3月10日頃に1度コンディションをベストにもっていったはずだ。そこから少し落として、開幕に向けて再び上げていった。

キャンプでは、投げ込んで、走り込み、体をいじめ抜き、オープン戦に入っていく時期になって疲れをとった。そこから開幕から1週間前をメドにドッとヤマ場にもっていった。

でも今年の先発ピッチャーはこの疲労を回復させている余裕がなかなか見つけにくいんじゃないか。リリーフはそうでもないだろうが、この“波”の作り方が容易でないってことだ。

わたしは現役時代にボクシングのチャンピオンと本番まで逆算した調整法について話し合ったことがあった。どこにピークをもっていくか? ってね。

先発は、早めに投げ込み、走り込みに取り組み、1回、今年は大丈夫といった手応えを早めにつかんでおきたい。ただ、あまり慌てさせても故障につながりかねないから、監督、コーチの導きも難しい。

とにかく昨年とは調整のリズムが違ってくる。わたしがコーチだったら、開幕3連戦に投げるピッチャーにはキャンプ終盤にいったんはベストの状態にもっていかせるね。

またおそらくシーズンに入ったら早く疲れがたまってくる。本来は長いイニングを投げさせたくても、シーズン当初はベンチがストップをかけるケースが出てくるだろう。

チームの戦い方にしても7月オールスターまではぶっ飛ばしていかんと。首脳陣は五輪の休息期間でどうやって調整するかまで考えられないはずで、とにかく開幕から突っ走ることだ。

もうひとつ。最近の野球界について巨人の阿部2軍監督が過保護だって言ってたが、まったく同感だ。わたしは前から指摘しているが、球数制限だって、指導者の育成のほうが先でしょってことを強く言っておきたい。

このままではスターが育ってこなくなる。発信力だってラグビーに負けてたし、五輪にも食われる。プロ野球界はあぐらをかいていてはいかんよ。心してかかりたいものだね。