復活劇への道筋が、うっすらと見えてきた。左膝蓋(しつがい)骨骨折という大けがからの復帰を目指す日本ハム上沢直之投手(25)が4日、2軍キャンプ地の沖縄・国頭でブルペン入り。捕手を立たせて21球を投げた。

打球が左膝を直撃した昨年6月18日DeNA戦(横浜)以来、231日ぶりのマウンドで、傾斜を使って投球を再開した。「順調に来ている」と、キャンプイン前に立てた6月実戦復帰の目標を軌道修正し、4月中に短いイニングで復帰することを目指していく。

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久しぶりに味わう足裏の感覚に、自然と笑みがこぼれた。約8カ月ぶりにマウンドに立った上沢は「ちゃんと球数を守れよ」という加藤2軍投手コーチ監視の下、弾むような躍動感でミットめがけて投げ込んだ。「傾斜での投げ方を思い出せるように」と20球。最後の1球に納得できず、1球だけ追加で投げた。「ばらつきはあったけど、思っていたより良いボールが投げられた。こっそり1球だけ、力を入れて投げました。普通に出来ることが楽しい」。いたずらっ子のような表情で笑った。

昨年6月18日DeNA戦(横浜)で、ソトの打球が左膝を直撃。膝蓋(しつがい)骨が真っ二つに割れ、手術を受けた。エースへの階段を駆け上がる最中に起きた不幸だった。リハビリ中も「昨年11~12月は、前に進んでいない気がして辛かった」。でも、このまま終わるわけにはいかなかった。

昨年11月に誕生した第1子の長女は、まだ野球をしている父の姿を知らない。「妻が見に来ていた試合でケガをした。これで(野球人生が)終わるのは、妻がかわいそう。復帰して、良い姿を見せたい」。折れそうな心を奮い立たせ、ここまでたどり着いた。

現在はウエートトレーニングで、筋力が落ちた左膝周りを重点的に鍛えている。投球フォームが変わるのは織り込み済み。「変化を受け入れた方が、早く体になじむ。昔の状態ばかり追い求めていても、仕方がない。良いボールが行っていれば、それが答え」。

今後は3日に1度のペースでブルペン入りする予定。キャンプ前には6月の実戦復帰を目標に掲げていたが、3月下旬にはフリー打撃に登板し、4月から短いイニングで復帰する計画に改めた。栗山監督は「あいつが勝って泣いている姿は、イメージできている。俺も早く見てみたい」。感動の復活劇を、みんなが待っている。【中島宙恵】

▽日本ハム荒木2軍監督兼投手コーチ(ブルペン投球を再開した上沢に)「久しぶりで、あれだけ投げられる。1軍投手のしっかりとした立ち投げが出来ていた。(故障の影響は)まだあるけど、なじませていけば大丈夫かな。大きな1歩」

<上沢の歩み>

19年6月18日 DeNA戦の6回、ソトの打球が左膝を直撃し救急搬送

同19日 都内の病院で左膝蓋(しつがい)骨骨折と診断され、整復固定の手術を受ける

同30日 都内の病院を退院。装具を付けて歩行している状態

同8月7日 近況報告のため1軍の札幌ドームを訪問。「1日でも早く戻りたい」

同10月2日 千葉・鎌ケ谷のリハビリは、患部周辺や上半身の筋力トレーニング、週1度のプールなど。「まだ痛いです」

同31日 キャッチボール再開

同11月29日 1000万円減の年俸6000万円プラス出来高払いで契約更改(推定)

20年1月19日 平地約30メートルの距離で捕手を座らせ投球練習。「五輪中断前に1度(1軍で)投げられたら」