ソフトバンクのデニス・サファテ投手(38)が、復活への第1歩を踏み出した。ヤクルト戦(ペイペイドーム)で、昨年3月21日のオープン戦楽天戦以来、1年ぶりに実戦復帰。

1回を1安打無失点に抑えた。最速は144キロにとどまったが「これからスピードが上がっていく」と手応え。通算234セーブ右腕が、股関節の故障を乗り越え、意義ある11球をかみしめた。

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苦しかったここまでの歩みを思い出していたのだろう。サファテはじっくりかみしめるように、しゃがみ込んでマウンドの土に手をやった。「長い道のりだった。いろんな感情が出てきた。興奮もしたし、緊張もした。頭の中で入り交じったような気持ち。決して簡単な道ではなかった」。実に348日ぶりに自分の居場所に立ち、大きな復活への第1歩を踏み出した。

6回から登板。先頭西田への初球は直球が高めに上ずった。2球目も続けてボール。3球目は142キロを投げ込み、遊飛に打ち取った。1死から西浦には中前打されたが、続く中村への3球目で捕手栗原が盗塁を阻止してアシスト。中村にはカウント2-2からの5球目、この日最速の144キロ直球を投じ、中飛に抑えた。予定の1回を無失点で終えると久々の笑顔を浮かべ、ベンチ前で仲間たちとハイタッチを交わした。

かつて150キロ台後半を連発し、17年には歴代最多54セーブを挙げるなど絶対的守護神として君臨した姿を思えば、まだまだ満足できる投球ではない。だが「大きな第1歩だった。投げていてもどこも痛くない。4、5カ月前には想像もできなかった。無事に投げられたことがうれしい」と声を弾ませた。復帰戦を見届けた工藤監督も同じ思いだ。「マウンドに上がれたのが何より。ぼく自身もほっとしました」。オフにはサプライズで米アリゾナのリハビリ施設を訪れるなど、右腕の復活を常に気にかけていた。それだけに、確かな足跡を示した11球を目の当たりにして、喜びもひとしおだった。

明るいサファテ節も戻ってきた。この日は144キロにとどまったが「一番大事なことは、今の時点で森より速い球を投げられたということだよ。これからスピードが上がっていくというのは分かっているからね」と、親しい森をいじりながら自信をのぞかせた。開幕にはモイネロが不在の予定で、昨季セットアッパーの甲斐野も故障中。ブルペン陣容が固まらない中で、「キング」の復活に期待が高まった。【山本大地】

▽ソフトバンク王球団会長(サファテについて)「投げられただけでもいい。(投球の)中身はこれからどんどん投げていけば、上がってくるからね。あれだけ腕が振れればいいよ」

<サファテの歩み>

◆大活躍 17年にプロ野球新記録の54セーブを挙げ、日本一に貢献する大活躍。3年連続最多セーブも獲得し、通算234セーブで名球会入りへ残り21セーブに迫った。

◆手術 18年開幕前に19年からの3年契約を結んだことを発表。一方、開幕から守護神を務める中で右股関節を痛めて苦闘した。4月末に帰国。手術を受けて米国でリハビリに時間を費やし、復帰できなかった。

◆再び帰国 19年は宮崎キャンプに2月10日から合流。フリー打撃などに登板し、実戦でも復帰登板した。ただ、速球が130キロ台と状態は上がらず、開幕1軍から外れて無期限で2軍調整。6月に主治医の経過観察などのため一時帰国。7月には、自身のインスタグラムで血小板を集めて患部に注入し、自己治癒力を高めるPRP注射を受けたことを明かした。同年は1、2軍とも登板なしに終わった。