世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、台湾プロ野球がいち早く開幕する。今季初戦予定だった11日の楽天-中信兄弟(桃園)は雨天中止となったが、今日12日の2カードで仕切り直す。世界のプロ野球リーグで最も早く開幕にこぎ着けた中華職業棒球大連盟(CPBL)を、日刊スポーツが直撃。感染症の脅威にさらされるなか、開幕できる理由に迫った。また、すでに3月17日に開幕した2軍や台湾の現状を、元阪神で中信兄弟の林威助2軍監督(41)に聞いた。【取材・構成=酒井俊作】

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台湾プロ野球では2軍公式戦が1軍に先行する形で3月17日に始まっている。中信兄弟の林威助2軍監督は12試合で8勝2敗2分けと開幕ダッシュしたが何より選手の体調に気を配る。

「毎朝、球場に入る前に選手は体温を測る。グラウンドでかみたばこを吐かないよう、禁止しています」

米球界を経験した選手も多く、かみたばこを愛用する若手もいるという。飛沫(ひまつ)感染を防ぐ細心の注意だ。就任3年目の林監督は、台湾南部の屏東(ピンドン)県で寮生活。「外出先から帰ったときも体温を測ります」。外出制限はないが、密集を避けるように注意喚起している。

2軍も開幕から無観客で公式戦を行う中で、試合のライブ中継が増えたという。「ファームはもともと、観客数も多くないですが、いまは逆に放送で見てもらえるチャンスが増えました」。昨季までは金曜日と週末の3日間の中継だったが1軍の開幕が2度延期になったこともあり、平日も放送。新たな発奮材料になった。

台湾は中央感染症指揮センターが中心となって、市民生活の衛生管理も行き届く。林監督によれば、マスクは薬局で購入できるという。「保険証を見せて1週間に3枚買えました。いまは2週間で9枚買えるシステムです」。公共交通機関でのマスク着用が義務づけられており、状況に応じて違反者には罰金も科す。

「台湾は(選手に)感染者が出ていないから開幕できます。このウイルスは世界中で広まっている。政府などの注意をしっかり聞いて自分から守れれば、このウイルスが終息する日も来る。その日に開幕できるはずです。自分からしっかりすることです。プロ野球だけのことではありません」

福岡・柳川に野球留学し、阪神でプレーするなど、18年を過ごした日本に、いまも強い愛着を持つ。「第2の故郷」が踏ん張ることを心から願っていた。【酒井俊作】

◆林威助(リン・ウェイツゥ)1979年1月22日、台湾・台中市生まれ。高校2年時に福岡・柳川に野球留学。近大をへて02年ドラフト7巡目で阪神に入団。強打の外野手で07年に打率2割9分2厘、15本塁打。通算454試合で打率2割6分4厘、31本塁打、125打点。04年アテネ五輪、06、09年WBC台湾代表。14年から台湾プロ野球の中信兄弟でプレーし、17年限りで現役引退。18年から同球団の2軍監督。179センチ、82キロ。左投げ左打ち。