苦しいときこそ笑顔。広島松山竜平外野手(34)が20日、マツダスタジアムで野手陣の班別練習に参加した。

練習時間が限られる中、内野ノックやフリー打撃など軽めの練習で終えた。広島は投手と野手、午前と午後の4班制で練習を行い、1勤1休体制をとっている。限られた時間、与えられた条件の中でも、松山は明るさを忘れない。

練習日、練習時間が制限された中でも、松山は明るい。この日の午前に練習を行ったB班野手の最年長ながら、内野ノックの際には後輩選手からいじられ、「まっちゃん!」の声も飛んだ。プロ野球の開幕はいつになるか分からない。選手も不安に感じる状況下でも、笑顔は忘れない。「野球を楽しむ」という原点を貫く。いじられキャラとして場を明るくするだけでなく、目の前の一球、一打に集中力を持って取り組む。

1年前の4月20日DeNA戦でプロ初の頭部死球を受けた。翌21日に「脳振とう対象選手」として出場選手登録を外れ、同30日に再登録されたものの、恐怖心はぬぐえなかった。「正直、怖さはあった。投手に(向かって)入っていこうとしても、体が拒否していたような感じ。それでだんだんと(フォームが)ずれていった」。打率1割台でシーズンを折り返した。

恐怖心を乗り越えるために、原点に立ち返った。「選手である以上、成績を残さないといけないんですけど、やっぱり自分は何よりも野球を楽しくやりたい。楽しみながらやろう」。グラブに刺しゅうされた「ENJOY」の文字。下を向くのではなく、笑顔で前を向いた。受けるのではなく、攻めに転じた。原点回帰が恐怖心を乗り越えるきっかけとなり、後半戦は56試合で打率2割9分6厘。松山らしさが戻った。

全国に緊急事態宣言が出されたことで、広島の練習は午前と午後に分かれ、1勤1休の4班体制で行われている。練習量は制限されるものの「試合はできてないけど、こうやって野球をできていることはうれしいことだと思う」。笑顔の松山は下を向かない。前を向く視線の先に、難局を乗り越える道があると信じている。【前原淳】