待ちに待ったB砲が、ようやく火を噴いた。阪神ジャスティン・ボーア内野手(32)に、待望の来日1号が飛び出した。4点ビハインドの9回先頭。初球だった。中日の左腕岡田が投じた外角118キロスライダーをとらえた。打球は弾丸ライナーで右翼席に着弾。巨体を揺らしながら、シーズンで初めてダイヤモンドをゆっくり1周した。

「うれしかった。自分のスイングができて、ホームランになって良かったよ」

開幕から11試合、39打席目でようやく飛び出た初アーチ。ボーアはサラリと振り返った。

左腕から打ったことにも意味がある。本塁打の打席まで、春季キャンプ中の初実戦から対左投手は27打席無安打。シーズンでも9打数無安打だった。「左アレルギー」が騒がれ、相手の先発が左腕の場合にはスタメンを外れる試合もあった。それだけに、周囲の不安を和らげる一振りにもなった。

優しき助っ人はバットが不調でも、明るさは絶やさない。「ゲームに集中するだけ。打てないことにストレスはないよ。自分のスイングを信じるだけさ」。日頃の練習ではチームメートの名前を日本語で呼ぶなど、積極的にコミュニケーション。エラーをしても、打てなくても、人前で決して下は向かない。8回守備前のボール回しでもマウンド上の22歳望月に近寄ってボールを渡し、声をかけて鼓舞していた。

開幕4番から不振で打順を下げていたB砲の1発。矢野監督は「何でもキッカケにしてもらえればいい」と評価した。4試合連続安打で調子は上向きつつある。首脳陣も日頃から話すように、打球の角度が調子のバロメーターを示す。ボーアは「チームが勝てていないので、勝つためにもっと打たないといけない。(勝利のために)どうやって自分が力になれるのかを考えてやっていきたいと思います」と力を込めた。打線のカギを握る主砲が、ようやく目を覚ました。【奥田隼人】