逆転劇への号砲は、ジャスティン・ボーア内野手(32)が響かせた。2点を追う6回、2死走者なしの第3打席。梅津が投じた外角高めの145キロ直球だった。

顔とほぼ同じ高さで見逃せば完全なボール球。振り下ろしたバットからはじかれた打球はグングン伸び、黄色い左翼ポールを直撃した。15日のヤクルト戦以来となる6号ソロアーチ。ドーム内に、復活を告げる激しい衝突音が響き渡った。

「リードされている展開だし、チームになんとか勢いをつけたい一心だったよ。本当に打てて良かった」

近本も久々の快音だったが、ボーアも久々の快音だ。右臀部(でんぶ)の張りを訴え、19日の中日戦から3試合欠場。復帰後も無安打が続き、故障の影響の大きさが心配された。だが23日広島戦で代打復帰して以来、12打席目に飛び出したヒットが待望の1発。打った本人もひと安心だ。

冷やりとするシーンもあった。2回の1打席目に梅津の147キロが右足に直撃。2回守備に就く前には場内に「ボーア選手が治療を行っています」とアナウンスが流れた。試合後は「大丈夫だよ」と笑ったが、痛めた臀部も含めてまだ万全の状態でない。だが、気持ちはいつも前向きだ。

「野球なのでいいときも悪いときもある。自分が今までやってきたこと、思ってきたこと、自分の信念を貫くことが一番。今日も何も変えずに臨んだらホームランになったよ」

誰よりも安心したのはヤキモキしていたであろう矢野監督だ。「何でもいいから1発というか、1本出てくれれば、本人も気分が違うと思う。(調子が)上がってもらわな困る」。6回のボーア弾が逆襲の合図となり、8回には一挙5得点の猛攻。近本の復活も大きいが、ボーアの復活も大きい。首位巨人猛追へ、明るい希望を感じる日曜日になった。【桝井聡】

▽阪神井上打撃コーチ(ボーアについて)「これをきっかけにしてほしい。昨日も言ったように、万全ではないと思う。でも試合に出たいという意気込みとか、クリーンアップ打ってる責任感とか、そういうものは大事にしてあげたい。明日は休めるし、また調子の良かったときのボーアが帰ってきてほしい」