連続写真で選手のフォームを分析する「解体新書」。今回は日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(49)が、広島堂林翔太内野手(29)の打撃をチェック。24日時点でリーグ8位の打率3割9厘と復活した要因をひもときました。

高卒3年目の12年にレギュラーとして起用された堂林は、この年144試合に出場。554打席で打率こそ2割4分2厘ながら、14本塁打をマークした。しかし、以降は1軍出場も減っていき、成績も下降線。このパターンで、再びレギュラーとして復活する選手は非常に少ない。しかし、プロ入り11年目を迎えた今季、打撃成績は飛躍的に向上。その秘密を打撃フォームの中から探ってみた。

以前は、思い切りのいいスイングをする半面、インパクトまでのスイング軌道が悪かった。バットのヘッドが外側から入ってくるため、ドンピシャのタイミングでミートした時は飛距離も出てホームランにできるが、「穴が多い」というタイプ。外角の変化球にはバットが止まらないし、内角の速い球はドン詰まり。活躍した12年も150三振。ミート率を上げるか、長打力を伸ばすか、どちらかの技術が上がらなければ苦しくなると思っていた。

一番の変化は「力を抜いて打つ」という技術が身に付いたこと。(1)から(4)まで力みがなくなり、上半身と下半身のバランスが良くなった。(4)ではグリップが後方に残ったまま左足を踏み出し、しっかりとした「割り」も作れるようになり、きれいなトップの形ができている。

もったいないのは、(5)から(6)にかけての軸足(右足)の使い方だろう。せっかく体の右サイドに力をためておけるトップの形ができているのに、(5)では投手側に寄っていってしまっている。こうなるのは、右膝が内側に折れるタイミングが早いから。右肘が右膝の真上辺りに来るまで我慢できれば、投手側への突っ込みも抑えられるし、強いスイングが可能になる。

この連続写真で打った球は、内角の若干甘めのカットボール。(7)では左脇を空け、左肘を抜くようにバットを出している。リードする左腕が柔らかく使えるようになったのが、今季の成長のポイント。昨年までは上半身、特に両腕に力が入りすぎるため、この時点でバットのヘッドが外側から入ってしまっていた。しかし、この写真を見ても分かるように、バットの先がグリップの位置より下にあり、ヘッドが捕手側に残っている。この形のまま、体を回転させて球を捉えれば本塁打にできただろうが、(8)では左肘が伸び、右腕で押し込むように打ちにいっている。その分、本塁打にはならず二塁打だったが、以前とは比べものにならないほど、打撃技術は向上している。

フォロースルーに入る(9)からフィニッシュの(10)までも、以前の強引さが消えている。内角球はボールとの距離が取りづらく、どうしてもヘッドをこねるようにして合わせてしまうが、フィニッシュの(10)から走り出す(11)までの移行もスムーズ。力を抜いて打つコツをつかんだのか、以前のような力任せに打つ打撃フォームから進化している。だから、外角球に対しても力まずに逆方向に打てる。広角にヒットゾーンを広げたことにより、ここまで打率は3割台をキープ。成長した姿を見せている。(日刊スポーツ評論家)