ソフトバンクが首位を死守した。中村晃外野手(30)が、オリックスの守護神ディクソンからレギュラーシーズンでは自身初となるサヨナラ打を放ち、チームを4連勝に導いた。同点の9回1死一塁で右中間を破る三塁打。劇的勝利で単独首位をがっちりキープし、貯金も今季最多の10に伸ばした。

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クールな男が、はにかんだ。同点の9回1死一塁。中村晃が右中間を破る鋭いライナーを放った。一塁から牧原が一気に生還し、サヨナラ勝ち。「初めてだな、と思いました。やっぱりいいですね。勝てたのでそれが一番です」。勝負強い男のイメージが強いが、意外にもサヨナラ打は初。苦戦を最後はものにし、仲間たちと勝利に酔った。

静かな表情の下に、燃える思いを秘めていた。25日は4打数ノーヒット。この日もオリックス先発の田嶋を打ちあぐね、やはり田嶋が先発した7月18日以来、今季2度目の2三振を喫するなど4打席目まで快音はなかった。「めちゃめちゃいいピッチャー。いつにも増して良かった。昨日も打っていないし、ムカついていました。なんとかやり返したい気持ちでした」。安打製造機は自分へのフラストレーションを力に変え、ここ一番で自身12打席ぶりの安打を放って鬱憤(うっぷん)を晴らした。

今季は両膝の痛みがあり、開幕2軍スタート。7月の1軍昇格後は入念にケアしながら、出場を続ける。「毎日チェックはしています。今は落ち着いている状態ですね。最近は塁にも出ていなかったので、膝の状態はいいですよ」。ジョークも出るほど、体の状態は上がっている。

工藤監督も最敬礼だ。「さすがですね。あそこで決めてくれるとは」。4番も打てば1、2番でも機能する「ユーティリティー」の存在に「いてくれたら常に頼もしいし、いてくれないと困る。相手からしたら本当に嫌なバッターです」とたたえた。

貯金は今季最多10。単独首位も守った。選手会長も務める中村晃は「いい流れで戦えている。このままいけるんじゃないかと思います」と、確かな手応えにうなずいた。【山本大地】