左腕なのに右打者キラーだ。巨人高梨雄平投手(28)が2回無失点の好投で楽天からトレードで加入後、初勝利を挙げた。5回、1点を勝ち越されてなおも無死二塁で登板。ピンチを難なく乗り切ると、6回も無失点で片づけ連続試合無失点を15に伸ばした。同じく今季楽天からトレードで加入したウィーラーも先制の7号2ランを含む3安打4打点。途中加入の2人が勝利を呼び込んだ。

   ◇   ◇   ◇

うそみたいな数字がある。高梨は今季ここまで左打者に対して20打数2安打。右打者に関しては、22打数無安打と1本の安打も許していない。セオリー通りにいけば左の変則サイドは、左打者のワンポイントでの起用が多い。だが高梨は左右ともに苦手にしないどころか右打者に打たれない。曲がり幅の大きなスライダーとシュート系を武器に「右打者とも勝負させてもらえて1イニングを任せてもらえているからですね」と謙虚に言った。

ユーチューバーとしての一面を持つなど、多才な男の好きな漫画は「嘘喰い」。ギャンブラーが心理戦でのし上がって行く物語だ。「だまし合いの中で人間の本当の部分が見える気がする。打者との駆け引きと似ているところがある」と引き込まれた。

自身も主人公の斑目のごとく、人並み外れた洞察力と頭脳で瞬時に最善の一手を考える。5回1死二塁、4番村上を四球で歩かせた。「最悪の場面を逆算して。どのバッターでアウトをとればいいのか、四球でもいいのかなど考えながらですね」。ピンチを広げたかにも見えるが、四球も作戦のうち。直後ヤクルトは左の雄平に代えて右の代打西浦を送り込んできた。高梨は、わなにはまったと言わんばかりに外角141キロで右飛に仕留めた。

侍ジャパンに選出された経験がありながらも、今季楽天では1軍出場がなかった。巨人移籍後の3試合では、同点や負けている場面での登板だったが、7月28日からは勝ちパターンの一角を担うようになった。食うか食われるかのプロ野球界で、再び地位を築いた。「まさかジャイアンツで勝ち投手になる日がくるとは。うれしいです。1試合1試合頑張ります」。無失点を積み重ね、セ界のトップへ上り詰める。【久永壮真】

▽巨人原監督(移籍後初勝利の高梨に)「今日はピッチャーにも助けられた。役割として、いいリリーバーですね」

◆高梨雄平(たかなし・ゆうへい)1992年(平4)7月13日、埼玉県川越市生まれ。早大3年春季リーグ戦で東京6大学史上3人目の完全試合を達成。JX-ENEOSを経て16年ドラフト9位で楽天入団。18年に球団初の年間70試合登板。昨季はシーズン途中に急性虫垂炎で手術を受けながら48試合に登板。今年7月に高田萌生とのトレードで巨人入り。175センチ、81キロ。左投げ左打ち