巨人の「銀さん」が、記念すべき1発を“封切り”した。

炭谷銀仁朗捕手(33)が、プロ15年目にして初となる右翼へのアーチを放った。8月27日は「男はつらいよの日」。前夜はファウルフライを落球。「男はつらいよ」だったが、見事に汚名返上した。先発した戸郷翔征投手(20)を巧みにリードし、リーグ単独2位の7勝目へと導いた。バットでも、マスクをかぶっても「寅さん」、いや「銀さん」が、チームの中心で存在感を示した。

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葛飾柴又から約20キロ。東京音頭が流れ、どこか“下町情緒”あふれる神宮。巨人の「銀さん」が敵地で今季1号を打ち上げた。0-0の3回先頭。江戸っ子の「フーテンの寅さん」とは違い、京都っ子で実家が「畳屋の銀さん」。本家みたく“振られる”ことはない。ファウルとなるか、微妙な打球は右翼ポールに直撃した。「(ライト方向の本塁打は)全然打った記憶がないです。ずっと打撃で貢献できていなかったので先制点を取れて良かったです」。通算38本目にして、初の右翼への1発だった。

8月27日は「男はつらいよの日」。巨人の「銀さん」が生まれる約20年前、1969年(昭44)同日にシリーズ第1作が公開。渥美清演じる主人公「フーテンの寅さん」のように、炭谷も誰からも愛される男。前夜の試合では、ファウルフライを落球。“男はつらいよ”といった具合に猛省した様子だったが、この日の試合前練習で元木ヘッドコーチから“いじられ”周囲は笑いに包まれた。

年上から愛され、後輩には頼りになる兄貴分。毎回走者を背負った戸郷を巧みに無失点リード。今季全試合バッテリーを組む13歳年下の後輩に安心感を与えた。平安(現龍谷大平安)から西武、巨人と旅してきた「畳屋の銀さん」。日本一への旅路に、笑顔をもたらし続ける。【栗田尚樹】