勝利への一振りが、スタンドへ届いた。楽天浅村栄斗内野手(29)が3年連続の30号に到達した。2年連続での30号は球団初。4点リードの4回、西武松本のスライダーを右中間席へ運んだ。ルーキー滝中の初勝利を強力援護。負ければ4位に転落するチームの危機も救った。今季は通算200本塁打を達成。チームの勝利を最優先にバットを振り続ける。

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腰をぐっと入れた。4回1死。西武松本の鋭く曲がり落ちるスライダーに粘った。右膝が地面につきそうになるくらいに沈み込み、バットをしならせた。滞空時間の長い打球は右中間席最深部へ。「シンプルに、あまり考えすぎずにいきました」。3年連続の30号。曇天の球場をわかせた。

主砲が1発を打てば、チームは勝つ。今季、浅村がホームランを放った27試合は23勝4敗(勝率8割5分2厘)。不発に終わった70試合は24勝42敗4分け(勝率3割6分4厘)と濃淡がはっきりと出る。打点を挙げた試合は34勝7敗2分け(勝率8割2分9厘)、打点なしの試合は13勝39敗2分け(勝率2割5分)。数字が存在の大きさを物語る。

ただ、本人は1発への執着心は薄い。「ホームランはあまり意識していない。でも結果的に勝ちにつながっているホームランが多いので、そこは自分の中でも満足しています」。9月は、球団の日本人では2人目の月間10本塁打を記録。9月22日ロッテ戦では自身初の1試合3発も記録。「何とか1日1本、いいところで打つというのを目標にしている。とにかく勝つことだけ意識してやりたいです」。ホームランは勝利への手段の1つと捉えている。

30発目はチームに勝利だけじゃなく、さまざまな価値をもたらす。ドラフト6位ルーキーの滝中の初勝利を強力援護。加えて10日に28歳を迎えた妻でタレントの淡輪ゆきへのバースデープレゼントともなった。さまざまな思いを乗せて、浅村は日々バットで期待に応える。【桑原幹久】