メモリアルな1勝で負の連鎖をせき止めた。楽天先発の岸孝之投手(35)が、オリックスを相手に7回3失点で5勝目を挙げ、通算2000投球回を達成した。味方の援護にも背中を押され、5試合連続でクオリティースタートを記録。志願の力投で7回を投げきり、記念ボードを掲げた。負ければリーグ優勝の可能性が消滅する一戦をもぎ取り、引き分けを挟んだ連敗を4で止めた。CS圏内の2位ロッテとは4ゲーム差とした。

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こん身の1球で「2000」を決めた。2点リードの7回1死、オリックス大城を2球で追い込み、直球で3球勝負をかけた。青色のグラブを振りかぶり、しなやかに、力強く右腕を振る。狙いの内角から、中へ入ったが見逃し三振。6回2/3を投げ、通算2000投球回に到達した。「今日達成したいなと思って頑張りました」。この回を3者凡退に抑え、渡辺直選手兼コーチから渡された記念ボードを誇らしげに掲げた。

プロ14年間で積み上げた「2000」を支えるサポートに頭を下げる。今季は変則日程の影響もあり、思うように調整が進まなかった。今季初登板は7月4日ロッテ戦。3試合に登板後、再び2カ月間ファーム調整に入り、キャンプさながらに一から体を作り直した。「よくここまで投げてきたなと。ずっと健康で投げてきたわけではないので、トレーナーさん、コンディショニングコーチ、もちろん家族、チームメートも含めて感謝したいと思います」。特に、コロナ禍で時間を共有した妻、子どもには重ねて言葉を贈った。「一緒にいて気持ちも落ち着きますし、いつも変わらずに接してくれる。そばにいてくれるだけで心の支えになりました」。

先発投手としてのプライドも「2000」を裏付ける。西武時代、簡単にはマウンドを譲らない涌井と切磋琢磨(せっさたくま)した。「ワクに続いて自分も負けじと目標にしてやっていました」。6回を投げ終え101球。この回にジョーンズに3ランを浴びたが「僕の中ではここでは降りられない。あと1イニング投げて達成したいという気持ちもあった」と続投を志願。きっちり0を並べ、役割を全うした。

逆転CSへ流れも引き寄せる。一昨日は守護神ブセニッツ、昨日は松井が被弾。負の連鎖が続いたが、引き分けを挟みチームの連敗を4で止めた。「まだ諦めていないですし、残り試合チーム一丸となってたくさん勝っていきたいです」。メモリアルな1勝を潮目とする。【桑原幹久】