ソフトバンクが3年ぶりにリーグ優勝を奪回した。マジック2で迎えた2位ロッテとの直接対決を制し、1リーグ時代を含めて21度目の優勝。昨季まで終盤の失速で西武に連覇を許したが、10月に入り15年ぶりの12連勝で加速した。次はクライマックスシリーズを勝ち抜き、4年連続の日本一に挑む。

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南海からダイエーとなって16年、ダイエーからソフトバンクになって16年。本拠地を大阪から移して32シーズン、2つの親会社が福岡でホークス文化を継承して同じ歳月がたった。リーグ優勝はダイエーで3度、ソフトバンクで6度。選手への投資で常勝軍団を築き、ファンを増やして大型補強を可能にしてきた。

そのスパイラルの中、3年連続日本一に輝いた昨年、球団は創立15年目で最高となる約325億円の売り上げを記録した。「何でも一番がいい」という孫正義オーナーの号令もあり戦績と比例するように経営日本一の球団に向け士気も上がった。しかし、開幕前の5月には本社ソフトバンクグループが投資失敗による1兆3600億円余りに及ぶ20年3月期の赤字決算を公表。球団スポンサーからは不安の声も上がった。さらにコロナ禍で、入場料など営業収益は大幅減。国内のエンターテインメント業界と同じく経営的に苦しいシーズンを余儀なくされた。ただ、チームは順調にペナントレースを戦い、3年ぶりVの上げ潮ムードに乗って、年間予約席など集客回復の見込みは大きい。常勝を続けるチームのコンテンツ力は厳しい環境に置かれた球団経営もしっかり下支えした。

昨年はドームを4万人収容へ改修、今夏は外周デッキでつながる娯楽施設「BOSS E・ZO FUKUOKA」を開業。2事業で100億円を投じた。野球以外でも楽しめる「ボールパーク化」を進める中、ソフトバンクならではの工夫もあった。無観客試合の中で、グループ子会社のノウハウを導入。人型の「ペッパー」、4足歩行型の「スポット」と呼ばれるロボット導入でエンタメ性を高めた。スタンドで応援パフォーマンスを繰り広げるロボットの動きには孫オーナーから「もっと奇抜な動きをするように」と毎試合のように指示が飛んだ。ネットを通じて世界にも発信。独自のカラーを打ち出した。今後、人工知能(AI)や仮想現実(VR)を取り入れることも想定。「ウィズコロナ時代」に向け、いち早く対応する機敏さも見せた。