「広報部長」が負けられまへん! 阪神糸井嘉男外野手(39)が20日、東大阪市立ウィルチェアースポーツコートで車いすソフトボールチームとの交流会に参加した。左足首を手術した昨秋にはリハビリの一環で同競技に参加しており、広報活動にも気合十分。40歳シーズンの外野レギュラー争いへ、言葉に覚悟をにじませた。

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糸井は覚悟を白球に乗せようと、柵越えを目指して何度も打ち直した。3イニング制の車いすソフトボール紅白戦。終盤に特別代打で登場した際のひとコマだ。最後は大飛球を右中間最深部に打ち上げ、外野手がフェンス後方にはじく“アシスト”も受けると、思わずガッツポーズした。

「やっぱり、足が動かへん方とか、足を失った方とかを目の当たりにするとね。僕らが恵まれていると言ったらアレですけど…」。共に汗を流した仲間の姿から何も感じないわけがない。「難しいですよ、これ。ひとこぎでも僕らより速いんで。奥が深いです」。左足首手術直後の昨秋にもリハビリの一環で同競技に参加。「僕も力をもらえますし、活躍して毎年報告できるように、そういう気持ちはあります」と力を込めた。

4年契約最終年だった今季は右膝痛の影響で86試合出場どまり。オフには2億1500万円ダウンの年俸1億8500万円プラス出来高払いで単年契約を結んだ。新助っ人ロハスの入団が正式決定すれば、ドラフト1位佐藤輝も含め、外野レギュラー争いのさらなる激化は必至。それでも40歳シーズンに競争を勝ち抜いてこその「超人糸井」だ。

交流会後は車いすソフトボールの「広報部長」就任を期待され「ありがとうございます。広報部長で、はい」と破顔した。もっとも効果的な広報活動は説明するまでもない。「やっぱり、すごい先輩を蹴落としてきて、そういう世界なんで。もちろん試合に出るにはチーム内の競争や、そういうのもある。僕はしっかり体を万全にして、やるだけ」。「広報部長」は燃えている。(金額は推定)【佐井陽介】

○…東大阪市の野田義和市長(63)は糸井の「PR大使」就任を熱望した。東大阪市立ウィルチェアースポーツコートの交流会に出席。「このコートは生きる力をつくる場所だと思っているので、すごく強力な助っ人が現れてうれしい」と感謝。「これを機会に糸井選手に何かやってほしい。大使、応援団…。糸井さんと阪神タイガースさんの事情が許せば、ぜひともお願いしたい」と期待した。

○…糸井は全国初の屋外車いすスポーツ専用コートを絶賛した。今冬に再開設されてからは初訪問。「今年から新しくなったんですよね? 去年まではコンクリートの上でやっていた。素晴らしい」。東大阪市を拠点とする車いすソフトボールのチーム「関西アンバランス」の約30人と紅白戦で汗を流し、車いすバスケのフリースローも体験。「健常者の方たちも一緒にできるのも魅力」と声を弾ませた。

▽日本車いすスポーツ振興協会・糸賀亨弥代表理事「(糸井さんは)打球を上げようと工夫されるじゃないですか。あのプロセスはみんなにとっても励みになる。諦めるんじゃなくて、こうやってプロの人は変えていくんだと。じゃあ僕も負けていられないという頭に変わってもらえたらと思います」

◆糸井と日本車いすスポーツ振興協会 オリックス時代の16年、車いすソフトボールメンバーの少年を球場に招待し、同競技の存在を知る。旧・東大阪ウィルチェアースポーツ広場オープン時から同協会にネット、バット、ボールなど道具を支援。車椅子スポーツ交流も続けている。

◆阪神の来季外野手争い 球団は新助っ人として、今季KBOで本塁打、打点の2冠に輝いた韓国KTのメル・ロハス・ジュニア外野手(30)と大筋合意している。外野起用が基本線のドラフト1位、近大・佐藤輝明内野手(21)の加入もあり、激しいポジション争いになる。その中、センター近本は不動。糸井にとってはロハスやサンズといった外国人選手だけでなく、陽川、中谷、高山、佐藤輝らとのバトルが待つ。ただ、今季左翼を守ったサンズは一塁に就く可能性があり、その場合、ロハスは左翼に回るとみられる。