球界の功労者をたたえる野球殿堂入りが14日、野球殿堂博物館から発表され、オンラインで通知式が行われた。アマチュアや審判員、野球発展に顕著な貢献をした人が対象となる特別表彰では、96年アトランタ五輪で銀メダルに導いた元日本代表監督の川島勝司氏(77)、野球関連の著書で知られるノンフィクション作家の佐山和夫氏(84)が選出された。競技者表彰では、選手としての貢献を表彰するプレーヤー部門、指導者も対象となるエキスパート部門ともに得票率で達せず、選出者はいなかった。競技者表彰で選出ゼロは98年以来となる。

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佐山氏は「これほど人生の中で驚いたことはありません」と恐縮した。「最大の球歴」と表現した旧制和歌山中学時代、ボールボーイを務めたことが野球のとりこになった原点だった。

「いくらか本を書いていると、高野連から意見を出すよういわれ、自信も実力もないがバッターボックスに入ったら、しっかりスイングしようと思っていました。振ったバットにボールが当たって、そこまで飛んでくれるのかということもある。今回の殿堂の話はその最たるもので、まさか自分がという思いです」

ノンフィクション作家として日米野球史を掘り起こしてきた。ニグロリーグ伝説の投手サチェル・ペイジを描いた「史上最高の投手はだれか」、第4回ミズノスポーツライター賞を受賞した「野球とクジラ」など多数の著書がある。

高校野球の改革にも尽力した。99年に日本高野連の顧問に就き、01年の「21世紀枠」の創設に関わった。外部有識者委員の一人として持論を展開し、5つの提言をまとめた結果だった。

「20世紀は戦争の世紀で強さ、勝つことが尊いというのが値打ちでした。しかし21世紀はそこから脱却し、多様な価値観を身につけなければならない」

高野連の田名部和裕理事は「日米野球史を丹念に調べ、新しい命を吹き込んでいただきました」と感謝。日本にベースボールを伝えたフォーレス・ウィルソン氏一家の招待、選手宣誓の立候補制なども提案した。

「野球は不思議で奇妙なゲームです。ベースボールの歴史、ルーツを突き止めてやろうと思っても、いけばいくほど興味は尽きない」。今後も野球界をはじめ、世界スポーツの振興に力を尽くす。【寺尾博和】