阪神元投手コーチで日刊スポーツ評論家の中西清起氏(58)が好評企画「解体新書」で阪神藤浪晋太郎投手(26)の投球フォームを分析した。前回分析した昨年の春先から、課題を克服。今季の完全復活へのポイントとして、脱力の「下柳投法」を提言した。【取材・構成=田口真一郎】

昨春のキャンプで、投球フォームを解析したが、そのころと比べると、シーズン終盤のフォームはかなり良くなった。

まず始動で言えば、<2>から<8><9>あたりの体重移動がスムーズにできている。これまでは、体を横に回して、三塁側のほうに倒れていきながら、キャッチャーに向かっていた。それがある程度、直線になっている。もう1点、改善されたのは、腕の振りだ。<11>では腕がしっかりと前に伸びている。右肩が左膝よりも前に出ている。春先は腰が引けたような感じで、体重が乗っていなかった。今は腕を長く使えるようになった。打者に対して、腕が短く見えてしまうと距離が詰められない。長身の藤浪が腕を長く使えると、打者は投手との間隔が近く感じ、タイミングが合わせづらくなる。ルーキーの時は右手の指先で、マウンドの土を触っていたほどだ。

シーズン後半に中継ぎを経験したことで、復調の兆しを見せた。復活はもう少しといったところだろう。気になるのは、やはり「力み」だ。<5>はまだ左肩が入りすぎている。<6>は手首が三塁側に向いている状態で、これでは腕が上がりづらくなる。まだ持ち前の馬力でカバーしているが、<5>から<7>で力みを抜けば、インパクトの瞬間までスムーズになり、回転のいいボールを投げられる。本来、力が入るのは、<8>あたりで<10>のリリースに集中していく。<5>の力んだ表情を見れば、分かるが、力を入れるのが、この写真では2、3コマ早い。

体重移動がスムーズになり、腕を上から振り下ろせている。右手首が横に傾かずに立てられるようにもなった。抜け球が減ったのは、うなずける。あとは「力み」の部分だが、もともと力を抜くのが下手な投手だ。脱力を意識し過ぎると、リリースのインパクトも緩んでしまう。そこで「下柳投法」を提案したい。<1>からリリースの<10>までキャッチャーを目視し過ぎている。<2><3>で三塁側を見ればいい。高校野球では捕手から目を離すな、と指導されることが多いが、捕手をずっと見ていたら力が入りがちだ。そんな投手は、目線を切ってやればいい。下柳がそうだった。あれはリラックスするためだ。そうすれば、<6><7>で力の抜けた状態になる。

藤浪自身も復活への手応えをつかんでいるはずだ。今年はスタートが大事になる。開幕から1、2戦で勝ち星がつけば、自信が確信に変わる。いい形で1年間投げられるだろう。黒星や5回もたない投球が2度続けば、しんどい。肝心なのは最初だ。先発ローテーションに入らなければ、終わってしまう。それぐらいの気持ちでやってほしい。

◆解体新書VTR 中西氏は昨年2月のキャンプ中にも藤浪の投球フォームを分析していた。横振りから修正し、コンパクトになったテークバックを評価。改善点として、<1>リリース時の手首の角度を数ミリ立てること<2>フォローで左膝に体重を乗せることの2点を挙げていた。それでもプロ初の未勝利に終わった19年からの良化を認めており、「目指す方向性は間違っていない」と語っていた。

阪神藤浪へ「下柳投法」提言の真意とは/中西清起2