1日に終了した阪神の春季キャンプはドラフト1位佐藤輝明内野手(21)が豪快な打撃で話題をさらった。プロ入り直後に、なぜ対応できたか。大学時代に打撃指導した近大の光元一洋コーチ(46)に、その秘訣(ひけつ)を聞いた。力強いフルスイングだけではない長所があった。【取材・構成=石橋隆雄】

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阪神佐藤輝がキャンプで大暴れする姿に近大・光元コーチも喜んだ。対外試合8戦で打率3割9分4厘、2本塁打、9打点。開幕スタメンへ向け、結果を残した。同コーチは「映像などで見ていると、ムダな動きがなくなっている。シンプルになって、すごくいい」と、プロの首脳陣の指導を受け、さらに進化していると感じていた。

ソフトバンク柳田のようなフルスイングが魅力だが、快進撃の秘訣はそれだけではない。近大の4年間で、打撃指導のテーマは意外にも1つだけだったという。仁川学院高時代には、未完の大砲。近大・田中秀昌監督(63)が、一振りでほれ込んだというスイングの速さを最大に生かすことを最優先した。光元コーチは「しっかりトップの位置を取り、そこから打つポイントまでを一直線に」という点に絞ったと話す。「あれだけスイングが速いので、一直線でいければ、人よりも2倍とまでは言わなくても、それくらい長い時間ボールを見ることができる」と説明。より長く球を見極めることができてくると、低めのボール球を空振りすることも減った。

キャンプを視察した他球団偵察隊が残した言葉も裏打ちする。巨人横川スコアラーは「みんなフルスイングって言うけど、あんまりフルスイングしていないんじゃないか。対応力がすごくある」と言えば、広島岩本スコアラーは「選球眼のよさを感じる」と話していた。プロの直球、変化球に対応できるのは、トップの位置から最短距離でボールをとらえることにこだわってきた結果だ。

シンプルな指導で佐藤輝は大きく育った。本人の野球に対する姿勢も能力を開花させる要因となった。光元コーチが明かす。「ああ見えて、ものすごく研究熱心。自分で研究して行動を起こせるのも佐藤輝の持っている資質のひとつ」。メジャーリーガーの動画などを研究し、その動きを取り入れる。「いろいろ試していたので、こちらからはあまり言わず、本人の考えを尊重していましたね」と振り返った。

春季キャンプ打ち上げから一夜明け、佐藤輝はつかの間の休息をとった。3日から練習を再開。5日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)からオープン戦に突入する。光元コーチが「飲み込みがはやい」と話すように、開幕までの3週間でどこまで成長するかが楽しみだ。

◆光元一洋(みつもと・かずひろ)1974年11月11日生まれ。広島県出身。遊撃手、三塁手として活躍。広島商では3年春に主将としてセンバツ出場。近大では96年に日米大学野球の日本代表に選出された。松下電器(現パナソニック)ではコーチ、マネジャーも経験。14年から母校近大に戻りコーチに就任した。右投げ右打ち。

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