3年目の進化だ。阪神近本光司外野手(26)が、西武戦の5回に、右翼へ弾丸ライナーでオープン戦1号を放った。3回にも右前打を記録し、マルチ安打で打率は5割3分3厘まで上昇。オープン戦は規定打席未到達も、「隠れ首位打者」だ。昨年の大山に続く、65年以降で虎史上4人目となるオープン戦首位打者は射程圏内。今季から選手会長に就任した若きリーダーが打撃爆発の予感だ。

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さらなる進化を予感させる弾丸ライナーだった。5回だ。近本はスライダーに狙いを定めていた。西武の左腕浜屋に1ボールから2球続けて外角直球を見せられていた。4球目は内角へのストレート。思わず体が反応した。迷わず振り抜くと、打球は一直線に右翼ポール際に飛び込んだ。「あまり実戦で左ピッチャーと対戦することがなかったので、どういう軌道か確認できた。スライダーを待っていたけど、タイミングが合ったというか、体が勝手に反応した」。昨季の9本塁打中、左腕からは1本だけ。オープン戦1号は価値ある左腕打ちとなった。

3回にも4試合連続となる安打を右前に運び、2安打。7試合を終え15打数8安打、打率5割3分3厘とハイアベレージを誇る。4打席足りず規定打席には未到達ながら、同じ社高出身、楽天辰巳の4割を大きく超える「隠れ首位打者」。「今どうこうじゃなく、開幕に勝てるように調整していきます」と冷静だが、65年以降では、81年北村、05年赤星、20年大山に続く球団4人目のオープン戦首位打者を狙える位置だ。12球団打率トップで開幕を迎えれば、自身初のシーズン打率3割が見えてくる。

ドラフト1位佐藤輝の加入により、打線は確実に厚みを増す。矢野監督は「1発は結果。ホームラン打者じゃないし。4の1、1本塁打というよりは、4の2でも4の3でも、四球でも何でも塁に出るというのがチーム的にもチカの価値を上げることになる。(本塁打は)そのうちのプラスアルファ」と話す。すでに1番起用は決定済み。シーズンでも首位打者争いに加わることができれば、チームは優勝へ加速する。

近本は試合後の取材で「しっかりチームを引っ張っていけるように」「優勝できるように先頭に立って頑張ります」と何度も「フォア・ザ・チーム」の思いを口にした。今季から阪神の選手会長に就任。入団から3年目までに就任するのは球団史上初めて。打順だけでなく、チームの精神的支柱として先頭に立つ使命がある。

オープン戦7試合でチーム打率2割8分8厘、11本塁打はいずれも12球団トップ。1番に近本がどっしり座り、大山と助っ人陣、佐藤輝が並ぶラインアップは破壊力満点だ。期待十分の猛虎打線をけん引するのは、虎のニューリーダーだ。【中野椋】

◆阪神選手のオープン戦首位打者 65年以降では、81年北村照文、05年赤星憲広、20年大山悠輔の3人。いずれも公式戦で飛躍を遂げている。81年北村は100試合に出場し、抜群の外野守備と強肩でセンターラインを引き締めた。05年赤星は3年連続60盗塁以上に加え、当時の自己最高となる打率3割1分6厘をはじき出した。昨季の大山は、開幕戦ベンチ入りしながら出場なしという屈辱から奮起。28本塁打(セ2位タイ)85打点(同3位)と、リーグを代表する大砲に育った。

◆阪神はオープン戦7試合目でチーム11本塁打となり、2桁に到達した。00年以降では、20年の5試合目に次いで2番目の速さとなった。阪神が残り6試合を予定通り消化し13試合を行えば、20本塁打となるペース。この大台に乗れば、10年の22本塁打(鳥谷6、桜井4、マートン、新井貴、ブラゼル各2ほか)以来となる。同年は公式戦でもチーム本塁打は173に達し、巨人226本塁打に次ぎセ2位に食い込んだ。

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