低弾道がズドンと突き刺さった。左中間スタンドをにらみつけた19歳は、右拳をグッと握った。遊撃のレギュラーを狙うオリックス紅林弘太郎内野手(19)が、7回2死一、二塁で真ん中低め直球を振り切った。

「なかなか1本が出なくて…。中嶋監督がずっと使い続けてくれていたので、1本出てよかったです。試合前練習で『悪くなると、体を振っている』と。もっとグラウンドで恩返しできるように頑張りたい」

オープン戦1号。春季キャンプから実戦5本塁打で、そのうち4本が3ランの「ミスター3ラン」。周囲からは打撃フォームや雰囲気が似ていると言われ「なんちゃって中田翔」とも呼ばれているが「自分ではミゲル・カブレラ…です」とMLB通算487本を誇る「お手本」に憧れる。動画で研究し尽くし、教科書をまねて、改良した新打撃フォームには「結構、威圧感がある」と手応えがあるが「中田翔さんのようにホームランをいっぱい打てるように頑張ります」とオトナの対応も見せる。

「ずっと打てなくて打率も落ちて、悔しくて…」。一時はオープン戦打率0割台まで落ち込んだが、この1発を復調のきっかけにする。16日からは地元静岡に凱旋。家族らに「良いものが見せられるように」と奮闘宣言だ。

先輩、同期にも恵まれた。京セラドーム大阪の試合には、大阪・舞洲の球団寮から漆原の愛車に乗せてもらう。同期入団の宮城らと「先輩」の運転に身を任せ、ゆらりと「職場」に到着。車内でのたわいない会話が、紅林をリラックスさせている。

中嶋監督は「必ず(調子が)落ちてくるときもある。良かったですね、結果が出て」と一安心の様子。紅林は「安達さんがああいう形になって…。僕にとってはチャンスになる。開幕1軍で、1年間ずっと1軍で頑張りたい」とコロナ感染の先輩を思いやりつつ、自身の立場もわきまえる。目指すステージへ一直線。「3・26」の遊撃には「ベニー」がいる。【真柴健】

<紅林弘太郎(くればやし・こうたろう)>

◆生まれ 2002年(平14)2月7日、静岡県生まれ。

◆球歴 駿河総合では1年夏からクリーンアップを担い、高校通算40本塁打。19年ドラフト2位でオリックス入団。

◆1軍デビュー 昨季11月3日楽天戦で放ったプロ初安打は、球団では89年高嶋徹以来の高卒新人初打席安打。11月6日の日本ハム戦では5回に決勝タイムリーを放ち、同期入団の宮城に勝ち星をプレゼント。

◆増量 入団時は84キロも、1年間で10キロ増に成功。鶏肉を中心に摂取して、肉体改造に成功。

◆愛称 紅林の「紅」から「ベニー」と呼ばれる。登場曲は父・将弘さんがファンであるロックバンド「X JAPAN」の「紅」。高校時代も自身の応援歌に使用されていた。

◆サイズ 186センチ、94キロ。右投げ右打ち。

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