“楽天の佑ちゃん”が、指揮官の勝負手に応えた。左横手投げの渡辺佑樹投手(25)が、プロ初ホールドを挙げた。1点リードの7回1死二、三塁、先発則本昂に代わり登板。ロッテの代打角中、田村を打ち取り、チームの3連勝に貢献した。昨オフ、育成契約とともに上手投げからサイドスローへ転向。元同僚の巨人高梨に弟子入りし、進化したシンカーも武器に、3月に支配下に返り咲いた。石井GM兼監督が高評価する左腕が、勝利の方程式入りへ結果を積み重ねた。

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ピンチはチャンスだ。1点リードの7回1死二、三塁。渡辺佑が黒のベンツのリリーフカーに揺られ、矢面に立った。整った目鼻をぴりっと引き締め、長い左腕を横から目いっぱいしならせる。代打角中に直球を強振されるも二塁手浅村の正面への二直。「いい当たりをされましたが、アウトが1個取れたことで落ち着けました」。続く田村はフルカウントから直球で三ゴロ。しびれる場面での石井GM兼監督の指名に応え、ふーっと肩の力を抜いた。

ピンチをチャンスに変えた。身長183センチの本格派左腕として横浜商大から17年ドラフト4位で楽天に入団。左腕エースの代名詞「47」を背負うも1軍登板は2年目の1試合にとどまった。昨年11月、石井GM兼監督から育成契約とともに横手投げ転向を打診され「即戦力と期待されて何年も結果も出てなかった。そろそろ何かを変えなきゃいけない時期」と前を向いた。

オフは元同僚で巨人で活躍する横手左腕の高梨に志願の弟子入り。投球前に右足をぶらつかせるフォームはそっくりだ。今春は育成唯一のキャンプ1軍スタート。練習試合、オープン戦で結果を出し、3月に支配下に返り咲いた。

持ち球のシュートが横手投げでシンカーに生まれ変わり、この日も右打者の田村から138キロの同球種で空振りを奪った。右打者には今季3打数無安打。指揮官も「シーズン中盤、終盤を見据えての起用。緊張感のあるところで投げていけば、リリーフの中にしっかりと入り込んでいける」と将来の勝利の方程式入りにも期待をかける。

8年ぶりに古巣復帰した田中将と06年夏の甲子園で激闘を繰り広げた日本ハム・斎藤佑樹投手と同名。「高校時代に言われたことはありますけど…」と“佑ちゃん”との呼び名には苦笑いも「田中さんは僕が小さい時から楽天で投げていたすごい選手。そういったところから話すことが増えたら、それはそれでうれしいです」と笑みを浮かべる。「使ってくれる監督、コーチに感謝したいですし、これからも任された場面で抑えていきたいです」。1度は窮地を見た変則左腕が、ピンチをチャンスに変え続ける。【桑原幹久】

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